透析患者とマグネシウム
透析中の患者さんが、硬便、便秘、腹痛で来院されました。(水分を取り除き、水分摂取制限もあるので、便が硬くなって便秘しやすい。)
透析中の患者さんには酸化マグネシウムが使用禁忌となっています。体内からマグネシウムが排泄できないので。
しかし、近年では一定量のマグネシウムが必要と考えられるようになってきているようです。
便秘にはビタミンCという作戦もあると思います。しかし、一般には大量内服はよくないとされているようです。
除水により、水溶性ビタミン不足も想定されます。ただし、尿中への排泄ができない点から、過剰状態も理論的にはありえます。
腎臓内科医で栄養療法に詳しい先生のご意見を聞きたいところです。
2020.08.09
透析患者とマグネシウム
(概要)・重度腎障害、透析患者では酸化マグネシウムという下剤など含めてマグネシウム禁忌となっている。
・最近、低マグネシウム血症は石灰化進行の危険因子となっており、マグネシウム濃度を2.5-5.0としたほうが予後がいいという報告がある
・透析患者ではよくリン吸着剤が使用される。リン吸着剤の中にマグネシウムが添加されている。
・リン吸着剤の中では炭酸カルシウムで、圧倒的にマグネシウムが多く含まれている。代表的なものでは、炭酸カルシウムの次に、鉄含有リン吸着剤、炭酸ランタンが続く。
・薬剤の中にはステアリンマグネシウムが含まれており、その物質は海藻類や豆類に含まれている植物性のマグネシウムより、吸収率が高い。
(印象と感想)
・マグネシウム禁忌とされているが、この報告が浸透され、Mg濃度の留意しながら、Mg製剤を投与できるようになれば、酸化マグネシウムなど下剤の選択肢が増えることは非常にありがたい。
・一方で、Mg蓄積による骨軟化症が危惧されるため、骨への影響を払拭する必要がある。
・血管石灰化のことを考えると、むしろMgは高めのほうがいいため、炭酸カルシウムや酸化マグネシウムも投与しやすい。つまり、Mgを含有する薬剤と投与すると、その薬剤による作用に加えて、Mgによる石灰化抑制作用というダブルエフェクトが得れる可能性がある。
・現状では積極的なMg製剤の投与は行わないが、Mg濃度の低値は石灰化のリスクがあるということで、カリウムやリンと同様に経過を追っていく必要があると考える。
慢性腎臓病とマグネシウム【マグネシウムは血管石灰化やCKD進展を抑制する】
ビタミン剤の服用について教えてください。|よくある症状Q&A|援腎会|福島県郡山市 (enjinkai.com)
透析者では、ホモシステインが蓄積して動脈硬化が起こりやすく、葉酸、ビタミンB6,ビタミンB12のサプリメントはホモシステインを低下させる効果があり、透析者ではこれらのビタミンを積極的に服用する必要があると言われています。
さらに、現在の透析はハイパフォーマンスの膜を使用することが多く、水溶性ビタミンが喪失しやすいと言われています。
ガイドラインでも、ビタミンBを代表とする水溶性ビタミンをサプリメントから積極的に補充することを勧めています。欧米では、水溶性ビタミンを多くの患者さんが飲んでいますが、日本では服用している人がほとんどいません。
これは、米国では、腎不全患者用のビタミンの製剤があるのに対し、日本では処方できる薬が無いことが一番の原因ではと考えられます。
さらに多数の薬を飲んでいる人が多いため、積極的にこれらのビタミン剤を内服することを勧めていないためと思われます。でも、最近の研究では、水溶性ビタミンを飲んでいる人は、飲んでいない人に比べて有意に生存率がいいと言う結果も出ています。
また、ビタミンA,ビタミンC,ビタミンEはエース(ACE)と呼ばれていて、抗酸化ビタミンとしていろいろな病気を防ぐ作用があると言われています。
しかし、ビタミンCについては、腎不全では正常人と同じ量を飲んでいては多すぎてしまい、マルチビタミンを内服することが勧められています。
現在、腎不全患者用のマルチビタミン剤が市販されています。
可能な方はを服用することを試みてはどうでしょうか。
こちらはオーソモレキュラー医学会ニュースより
慢性腎疾患がある人は、腎臓や透析治療で除去できず有毒なレベルまで蓄積しかねない、大量の生化学物質やミネラルをもたらす食品は摂らないよう、食事に気を付ける指導を医師から受けるかもしれません。しかし、ビタミンCはそうした食品とは違います。シュウ酸塩の蓄積予防に役立つからです[1-3]。また、透析患者にはビタミンCの欠乏が見られることが多く、健康に良いビタミンC値を保つためには、ビタミンCのサプリメント(1日当たり2,000~6,000 mgを数回に分けて摂ること)が必要と思われます [4,7-9]。慢性腎疾患や腎不全の患者の場合、マグネシウムと併せてビタミンCとビタミンEを摂ると、循環器疾患の予防や、腎機能不全に関連または起因した他の疾患の予防に役立つことを示す十分なエビデンスもあります。
なぜ慢性腎疾患の患者はビタミンCのサプリメントを避けるように言われているのか?
慢性腎疾患ならびに透析患者の場合、ビタミンCは必要なのにその値が低いことがよくあります[4,5] 。しかし数十年前(1950~1970年代)には、体内の組織にシュウ酸塩が蓄積することに問題がありました。おそらくその理由は、慢性腎疾患の患者が必ずしも透析を受けていなかったことにあり、また透析患者の場合は時折、透析治療を受ける前にシュウ酸塩の濃度が高くなります[4]。そのため、慢性腎疾患がある人たちは、シュウ酸塩を含む食品を避けるよう、また、ビタミンCを摂らないよう指導されたのです。しかし、もっと最近の透析治療を正しく行った場合には、シュウ酸塩の蓄積は見られていません[4]。たとえ1日1,000 mgを超えるビタミンCを摂ろうと、それが腎臓結石やシュウ酸塩蓄積の原因となることを示す確かなエビデンスはありません[1-3]。たとえシュウ酸塩がビタミンCではなく食事(シュウ酸塩を多く含む濃い緑色の葉野菜など)に由来している場合であっても、ビタミンCの高量摂取は実際、シュウ酸カルシウムの沈殿を防ぐのに役立ちます[1,2]。もし、シュウ酸カルシウムによる腎臓結石の問題を抱えている人がいたら、カルシウムのサプリメントは完全に避け、カルシウムを多く含む食品の摂取を最小限に抑えるべきです。また、マグネシウムはカルシウムと競い合ってシュウ酸塩と結合し、シュウ酸マグネシウムとなりますが、こちらのほうがシュウ酸カルシウムよりはるかに溶けやすいので、シュウ酸カルシウムの沈殿による結石形成の予防に役立ちます[6] 。従って、マグネシウムのサプリメントを含む十分なマグネシウム摂取(クエン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウムまたは塩化マグネシウムを1日300~500 mg、数回に分けて摂る)とともに、十分な水分摂取を行えば、一番多いタイプの腎臓結石はできにくくなります[6]。