夏井睦著 創傷治療ハンドブック
圧倒的な写真の量と、説明のわかりやすさが素晴らしい。
以下 「序」より引用
また、湿潤療法はそれまでの外傷治療の常識と外科の常識を根本から否定した治療原理であるため、治療を理解する上で「従来の外科の常識」は必要なく、それどころか邪魔者でしかない。だから、過去の常識に囚われた外科専門医は治療を理解できずに拒否し、逆に外科の知識のない内科医や小児科医は容易に受け入れ、実践してくれたのだ。
いずれもゲーベンクリームなどの「組織破壊型外用薬」を用いた治療行為による人為的損傷であるが、重要な点は、これらの医原性潰瘍を作った医師たちは「傷を深くしてやろう」と考えてゲーベンクリームを使用したのでなく、「何とかしてやろう」と考えてゲーベンクリームを使用した、というところにある。彼らは謂わば、善意の塊である。そして、その善意が患者を難治性潰瘍という地獄に叩き込んだのだ。悪意に基づいた行動はもちろん怖いが、間違った知識に立脚した善意は悪意と同等以上に恐ろしい災厄をもたらすのだ。