希望と勇気の違い

エリック・ホッファー自伝より引用

レストランで働いた数週間のうちに、幾人かの客達とは知り合いになった。いつも元気だった私を彼らは「ハッピー」と呼んだ。客が多いときにはウェイトレスを手伝ったりしたが、そうするうちに自分が給仕の仕事が好きなことにきづいた。よい従業員やボーイになれただろうと思う。ある日、車に乗せてくれたあの運転手がレストランに入ってきた。あいさつをして図書館でゲーテの言葉を見つけたことを話し、間違って引用するのは犯罪だと冗談半分に忠告してやったが、彼は真剣に受け止めなかった。彼は希望も勇気も同じだと言ったのだ。私は最善を尽くしてその違いを説いた。熱くなって語っていたから、まもなくまわりの客達も話に加わってきた。そして、ほとんどの人間が私に賛成した。

 

自己欺瞞なくして希望はないが、勇気は理性的で、あるがままにものを見る。希望は損なわれやすいが、勇気の寿命は長い。希望に胸を膨らませて困難なことにとりかかるのはたやすいが、それをやり遂げるには勇気がいる。闘いに勝ち、大陸を耕し、国を建設するには、勇気が必要だ。絶望的な状況を勇気によって克服するとき、人間は最高の存在になるのである。