鉄芽球性貧血について・・・確率的親和性

日本内科学会雑誌 2026年2月号より

鉄芽球性貧血は、骨髄における環状鉄芽球の出現を特徴とする貧血であり、その実態は鉄の利用障害を原因とするミトコンドリアへの鉄の利用障害を原因とするミトコンドリアへの鉄の異常蓄積である。後天性鉄芽球性貧血の代表である骨髄異形成症候群については、スプライシング因子であるSF3B1の変異が高頻度で認められ、スプライシング異常がその発症に深く関与していることが明らかになっている。一方、遺伝性鉄芽球性貧血は、単一の遺伝子変異により発症する先天性の鉄芽球性貧血は、極めてまれな疾患であるが単一遺伝子により発症するため、同定された遺伝子の機能を解析することにより、鉄芽球の形成機序だけでなく、生理的な鉄代謝のメカニズムの解明が期待できる。これまでに原因遺伝子としてヘム合成やミトコンドリア遺伝子など複数の原因遺伝子が同定されているが、既報の遺伝子の変異が認められない症例が半数近く存在しており、これらの症例の詳細な解析により未解明の鉄代謝経路が明らかになる可能性がある。
このうち最も頻度が高い遺伝性鉄芽球性貧血は赤血球5-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS2)の変異によるX連鎖鉄芽球性貧血(XLASA)である。ALAS2はグリシンとスクニシルCOAを重合してアミノレブリン酸を合成する赤血球におけるヘム合成の初発酵素である。ALAS2の遺伝子座がX染色体にあることから、ALAS2の変異による鉄芽球性貧血は基本的に男性が発症する。ALAS2の変異によりヘム合成が不全となり、ミトコンドリアでの鉄利用障害が起こり、結果として鉄芽球が形成されるものと考えられている。XLSAの臨床的特徴は、半数以上の症例がビタミンB6の投与に反応することである。ALAS2は補酵素としてビタミンB6を必要とするが、特定のアミノ酸変異を有するALAS2ではタンパク質の構造変化が生じ、ビタミンB6との結合性が低下することが報告されている。このうような変異を有する症例においてはビタミンB6の大量投与にて結合性の低下を補うことが可能と考えられ、実際にインビトロの活性解析結果と、臨床的有効性には相関が認められている。

これは、確率的親和性ですね。