血液検査パニック値に係る死亡事例の分析
2024年12月号 医療事故調査・支援センター編
(化学療法前の検査値に関連した事例)
参考事例1
①80歳代、高血圧、心房細動があり、肺癌に対し外来化学療法中の外来患者。
②化学療法第2クール開始前の定期採血。
③AST482 ALT410であったが、医療機関が設定したAST、ALTのパニック値の閾値は、1000以上、のため、臨床検査技師から医師への報告対象外であった。医師は検査結果を確認し薬剤を投与した。10日後、患者は意識障害、黄疸のため救急外来を受診し、急性肝不全のため入院した。
④入院2日後(パニック値検出より約2週間後)に死亡。
⑤死因は、多臓器不全、AI無。解剖無。
参考事例2
①60歳代、大腸がん術後、肝転移に対し外来化学療法中の外来患者。
②化学療法第2クール開始前の定期採血。
③AST 855 ALT 932であったが、医療機関が設定したAST、ALTのパニック値の閾値は、1000以上のため臨床検査技師から医師への報告対象外であった。医師は検査結果を未確認で化学療法の薬剤を処方した。薬剤師、看護師は、検査結果を確認しなかった。内服14日目の定期受診時に、医師は前回の検査結果を確認し、患者は緊急入院した。入院後、薬剤性肝障害と判断され、ステロイドパルス療法を行った。
④入院10日後(パニック値検出より約3週間後)に死亡。
⑤死因は、薬剤性肝障害の可能性。AI無。解剖無。
(パニック値の項目として取り扱うか議論があるD-DIMERに関連する事例)
参考事例3
①40歳代、右変形性膝関節症に対し寛骨臼回転骨切り術後の入院患者。
②術後の定期採血。Dーdimerのパニック値の設定有。
③術後17日目にD-dimerが64.3pgと上昇したため看護師は医師に報告した。術後D-dimerが15異常は、脈管エコー検査を行い深部静脈血栓症の検索を行うことになっているが、検査を実施しなかった。患者はリハビリテーション後にショック、心停止となった。
④急変より約2時間後(パニック値検出当日)に死亡。
⑤死因は肺血栓塞栓症による急性循環不全。AI有。解剖有。
参考事例4
①50歳代、腰痛のため救急外来を受診した患者。
②原因検索目的の検査。D-dimerのパニック値の設定有。
③救急外来でCT検査の結果。腰椎圧迫骨折と診断され入院した。医師は、救急外来で採血したDーdimer44pgの検査結果を確認しなかった。院内にパニック値を報告する体制はあったが、医師に報告したか否かは不明。翌日の採血でCKが高値のため循環器内科を受診したが、循環器内科医もD-dimerの検査結果を確認しなかった。症状が軽快したため退院したが、翌日夜に突然意識が消失し、救急搬送された。
④急変より約1時間半後(パニック値犬種ちょり2日後)に死亡。
⑤死因はスタンフォードA型急性大動脈解離。AIなし。解剖あり。
参考事例5
①60歳代、知的障害があり、施設入所中。施設内で倒れており、救急搬送された外来患者。
②原因検索目的の検査。D-dimerのパニック値の設定なし。
③医師はD-dimer43.6pgを認識しておらず、胸腰椎移行部痛があったが、筋骨格起因であると判断し帰宅させた。帰宅後も症状持続。嘔吐出現あり。再受診したが、病院到着後は意識障害、頸動脈触知不可であった。心臓超音波検査で心のう水貯留あり、心膜開窓術で血清排液多量。
④受診当日(パニック値検出より約11時間後)に死亡。
⑤死因は、上行大動脈化から両側総腸骨動脈に連続する動脈解離、心タンポナーデ、AI有。解剖無。
コラム1 D-dimerをパニック値項目として扱う際の課題
D-dimerが上昇する疾患のうち生命の危険がある代表的なものとして参考事例にもあるような急性大動脈解離や肺動脈血栓症が挙げられる。これらは、一見重篤感がない場合があり、潜在していることに気づかずに見逃されると死につながるkiller diseaseとして知られており、救急外来における鑑別疾患として重要である。D-dimerは、カットオフ値を500ナノグラム(0.5㎍)とすると、これらの疾患の除外診断に活用できることが示唆されている。
一方で、D-dimerは、急性大動脈解離や肺動脈血栓症以外に、悪性腫瘍や肝硬変といった悪性疾患や手術後などでも上昇する。そのため、パニック値としてD-dimerを設定した場合、これらの疾患なども鑑別に挙がることに留意する。
また、D-dimer測定にあたっては、抗疎結合免疫吸着測定法やラテックス法なで複数の測定法や試薬が存在し、それぞれ最小検出感度、定量限界、再現性など診断能力に差がある他、表示方法もngと㎍の2種類が孫ぞアイス。そのため、D-dimerをパニック値として扱う際は、これらの点にも注意が必要である。
■ 基本のカットオフ
最も一般的(FEUの場合)
-
0.5 μg/mL(=500 ng/mL)未満 → 陰性と判断
👉 つまり
0.5 μg/mL(FEU)未満なら、PEはほぼ否定的(低〜中等度リスクの場合)