創傷の湿潤療法

キズ・ヤケドは消毒してはいけない 夏井睦著より 2007年11月

傷口の乾燥をふせぐだけでキズがすぐに治ってしまうことは、じつは40年以上前から証明され、医学の教科書にも書かれている普遍的事実だ。私は単に、その方法を徹底的に追及し、キズだけでなく主婦手湿疹や乾燥肌の治療に応用しているだけのことだ。

いいことだらけに思える「うるおい治療」だが、医者の中には拒否反応の示す人が少なくない。素人である皆さんの方が理解が早く、すんなり受け入れてくれるのだ。どうやら医者にとっては、「消毒をしない」ということろがお気に召さないらしい。
私も医者の端くれだからわかるが、医者の生活と消毒は、切っても切れない関係にある。医者を30年しているということは、30年間毎日消毒をしてきたということだ。だから、『消毒をするな、消毒をしてはいけない」というのは、太陽が西から昇るに等しいショックを与えるらしい。長年消毒をしてきた医者は消毒自体に愛着があり、消毒薬にすばらしい治療効果があると信じ込んできた。

実際、「いきなり消毒をやめるわけにもいかないし、これまで消毒をしてきたし・・・・」などの文句や愚痴はいろいろなところから聞こえてくる。たぶん、こういう医者は死ぬまで消毒薬を握りしめているだろう