糖尿病性たんぱく尿の管理

ドクターサロン 2024年9月号より引用

・ほかの腎疾患に比べ、糖尿病性腎症の場合には、糸球体が炎症などで壊れてタンパク尿が出てくるというよりも、糸球体の構造そのものは保たれているにもかかわらず、糸球体の中の血圧が非常に高くなることにより、タンパクが漏れてきてしまうかたちで、少量のタンパク尿が早い段階で出てきます。その場合、構造は壊れていないので、血糖の管理や血圧の管理など、標準治療として設定されている様々な糖尿病の管理目標をしっかりと守ると、タンパク尿が消えてくれます。

・ほかの腎疾患は、一度出てきたタンパク尿を消すことはなかなか難しいですが、糖尿病は初期ならば生活習慣を見直すことでタンパク尿が消えてくれると言う特徴があります。

・糖尿病の患者さんにタンパク尿が出てきたときに、それがどういった病態かを考えると、大きく分けて2つあります。ひとつは糖尿病性腎症が出てきた。あとは糖尿病の患者さんに別の腎臓病が出てきた。

・この2つの可能性の鑑別には、例えば検証所見でβ2ミクログロブリンやNAGが出ていても、あまり役には立ちません。それよりは尿沈渣をしっかりと見ていただき、血尿があるかないかで判断します。あるとしても赤血球の形が糸球体型か非糸球体型かを見ていただくほうが、糸球体病変があるかないか、糖尿病からくる糸球体からのタンパク尿なのか、別の腎疾患ができたのかの鑑別に重要です。尿沈渣は尿細管マーカーよりも、より重要な情報を提供してくれる検査だと思います。

・そうすると、注目するのは原則的にはクレアチニン、eGFRですね。もうひとつは、早期だとUAE(アルブミン尿)。このあたりでいいですか。

・アルブミン尿が急激に増える、もしくはアルブミン尿が少ないのにeGFRが急激に落ちるような場合には、糖尿病性腎症の急性増悪の場合もないわけではありませんが、別の腎臓病が合併している可能性が高いです。

・腎症2期は生活習慣の是正により消すことができるゴールデンタイムという意味で設定された。

・2022年度の日本透析学会が出した統計調査の結果、糖尿病性腎症による透析導入の患者さんは明らかにピークアウトしてきています。

尿中赤血球形態
鑑別ポイント!file_19_43_1.pdf

糖質制限で微量アルブミンが減少する患者さんをよくみます。

 

微量アルブミン尿の段階で既に3割が網膜症を合併 – 伊藤内科医院