親切なサマリア人

以下引用・・・・死にそうなボロボロの囚人。皆早く死なせてあげればよいのに、と思ったことでしょう。

 

西郷さんの健康は、おかげでようやく元にもどったそうです。明治維新のあと、西郷さんは、「自分が今も生きているのは土持さんのおかげです」と語っています。
 沖永良部島の過酷な獄中生活で、もしもこの時、西郷さんが死んでしまっていたとしたら・・・・と考えます。日本はどうなっていたでしょうか?明治維新は成功せず、結局のところ日本は、欧米の植民地にされていたかもしれません。ぞっとする話ですが、この時、西郷さんの命をつないだのは、一人の善良な役人の、自己犠牲をいとわない優しさだったのです。

 土持は、今、目の前の牢内で、ボロボロになっている囚人が、のちに日本史上を代表する英雄になる・・・などとは思っていなかったでしょう。ほとんどの島の人々は、「気の毒だが、あの人は、このまま一生、罪人として、この島で朽ち果てるしかなかろう」とみていたはずです。それでも、土持は、西郷さんの待遇改善のために奔走し、さらには私財を投じました。西郷さんの人間的魅力がそうさせた・・・という面は、たしかにあったでしょうが、だからといって、まわりの人々すべてが、そのような行動にでたわけではありません。

 土持だけだったのです。ここで私は、「福音書」にある「親切なサマリア人」の話を思い出します。