書評 「オメガ3の真実」

崎谷先生の「オメガ3脂肪酸危険説」の本です。

①オメガ3は、肝機能障害、甲状腺機能低下、性腺機能低下、免疫系の機能不全、ミトコンドリアのエネルギー産生ダメージ(糖のエネルギー代謝抑制)、シミ(老人斑)、癌の転移促進などの慢性病と呼ばれる症状をひきおこす。

②魚油はとても酸化しやすい。オメガ3はオメガ6よりも酸化されやすい。

③FDAがDHAをミルクへの添加を安全、としていることへの批判

④筆者はフィッシュオイルを摂り続けて、身体が”ボロボロ”になった。

⑤オメガ3はよく、オメガ6は悪い、というのは単純化されすぎたストーリーである。

⑥オメガ3はビタミンDの働きをブロックする。

⑦米国の循環器学会(AHA)は、フィッシュオイルを1日1グラム推奨している。これはEPA・DHAの量が多すぎる。

⑧鉄の摂取にあまり肯定的ではないよう。「鉄のサプリや鉄剤は大量のアルデヒドを発生させるため非常に危険です。」

『感染症の根本治療ー鉄を奪え!』 | Dr.崎谷ブログ (paleo.or.jp)

⑨現代人は平均で一日100gのタンパク質を摂取している、との記述。 欧米人の話では?

➉花粉症の本当の原因を花粉に含まれる過酸化脂質(アルデヒド)としている。

⑪食物アレルギーは食物の中にあるプーファが酸化することにより炎症ゴミが侵入することにより起こる。

⑫日本人が米国人と同様な食事(現代食)をしている、というような記述がある。日本人と米国人の食事内容はかなり異なっているが、講演会でもよく「食の欧米化がよくない」とステレオタイプを聞かされる。

ちなみに、日本人の脂質、タンパク質摂取量は米国人よりかなり少ない。(日本人の一日の平均脂肪摂取量)

⑬NASH(非アルコール性脂肪肝障害)の原因を高脂肪食(高プーファ食)としている。糖質過剰説は?

⑭2017年最新の疫学データではオメガ3に肯定的な内容が圧倒的に多いが、2018年の大規模臨床結果は有効ではなかった。正当な評価のためには、基礎的データを解析する必要がある、としている。

⑮フィッシュオイルは高血糖をひきおこす。

 

 

 

 

私の感想

勉強になる点も少なくなかった。魚油が酸化しやすいなど。

基本的な栄養学の認識が、私とはだいぶん異なっているようだ。

生化学レベルの話が多いが、臨床研究例や自験例の報告がない。オメガ3脂肪酸を用いた国内の臨床研究(肯定的なデータ)の結果が説明できない。生物は海から発生してきている。魚食が有害、というのは素朴に考えにくい。(粗悪なフィッシュオイルは良くないかもしれないが)

生化学の話は生体内では限りなく複雑なので、単純化した結論は得にくいものだと思う。 筆者の単純化の一例が、鉄に対する考えに表れていると思う。筆者は鉄を危険なものとみなしているようだ(特にプーファ存在下では)。生化学的には正しい面があるが、日本人女性のひどい鉄不足状態から考えると、バランスがとれていない。

 

砂糖や果糖に対する考えでも同様だ。生化学的な根拠はあるが、実際の血糖や体重の動きは見ていない。

「ケトン体有害説」では、ケトン体を使って学力が改善したり、突然人が読書家になったり、てんかんが改善したりすることが説明できない。

筆者の見解は、私の経験からすると、臨床観察に基づくものとは考えにくい。

そうではあっても、過酸化脂質をテーマにしたこの本は興味深かった。

 

『鉄欠乏性貧血は存在しない!』 | ドクターヒロのリアル・サイエンス (ameblo.jp)

鉄総集編DVD | 原始人食/社団法人パレオ協会 (paleo.or.jp)

 

以下アマゾンの書評より引用

魚をよく食べますし、少し前からオメガ3のオイルも使い始めましたが、すこぶる体調がよく、柔軟性が上がり、筋力も持久系スポーツの成績も向上しました。オメガ3が悪いという意見に驚いて買って読んでみましたが、結局オメガ3で何の病気になった人も、逆にオメガ3をやめて何らかの病が改善した人も、一つも実例がありませんでした。表紙の慢性病とはいったい何を指すのか?著者は臨床医ではないのかも知れませんが、ある物質が増えたという動物実験ばかりでなく、少なくとも症例報告なり臨床研究は示すべきでしょう。
オメガ3がアルデヒドになる、はちょっと無理があるのではないでしょうか?アルデヒドはアルコールを飲んだ後の二日酔いを起こす物質であり、分解にはアルデヒドデヒドロゲナーゼが必要です。本当に有害なほど溜まるのであれば、お酒に弱い人は症状を起こすはずです。私は酒が弱いですが、大量のオメガ3を食べても二日酔いにはなりません。
人類も魚類から進化したわけで、魚を食べることで毒素が発生するとしたら、それを処理する機構は当然備えているはずです。オメガ3はクルミにも多く含まれ、古来、人類にとって重要な栄養素であったと考える方が妥当ではないでしょうか?
少なくとも私と家族は調子が良いですし、オリンピックアスリートがオメガ3を摂ることでパフォーマンスアップした例も報告されています。魚食の多い民族は日本人はじめ長寿が多いことも周知の事実でしょう。
それらを否定するほどのオメガ3の害の実例、「『プーファ』フリーでよみがえる!」の実例があればぜひ知りたいところです。
著者のパレオダイエットの趣旨、ワクチン否定、塩分摂取推奨などには共感するところも多いのですが、オメガ3否定と糖質推奨は論理的にも実感としても無理があるように思います。