医療体制

 素朴な医師たちは何年もわたって「結果がよいのなら、なぜ精神科医がみなそのようにやろうとしないのか」という、ごく単純な問いで私達の主張を退け、ぶちこわそうとしてきた。彼らは、医師はみな患者の利益のために最新の医療を用いる志に燃えている、と思っている。実際は、医師はみな全くちがった志に燃えている。医科大学のような自分たちを規制する機関から、攻撃されないようなやり方をすること、また患者やその家族によって法廷で攻撃されないようにすることである。仲間からの非難を避ける最も確実な方法は、みんながやっていることをすることである。すなわち医科大学や卒業研修で教えられたことを実行することである。

古い観念の奴隷になり、新しい経験を恐れるのは、人間の古くからの特徴である。モーゼはイスラエルの人々を、エジプトから”約束された地”へと導いた。その旅の全行程は、徒歩でさえ何週間かでよかったはずである。なぜ40年もかかったのだろうか?これは、歴史上最も回り道をした旅のひとつだったかもしれない。パレスチナの縁に密着しながら、砂漠を大きく回って歩いたのである。これはナビゲーションが貧弱だったからではない。聖書によれば、モーゼは奴隷として生まれてきた人たちの群れを連れて、パレスチナの原住民を支配することは望めなかったからである。彼らは別の生き方を知らなかった。モーゼは、約束された地を征服する仕事を企てられる熱意と精神を持つまでには、砂漠の中で自由な人間として生まれた、2世代の男女が必要だろうと結論していた。彼は奴隷を自由な男女に変えるのに、2世代の自由を必要としたのである。医師たちも、古い理論と実践から自由になるには2世代を必要とする。