病歴と身体診察の重視・・・山中克郎先生

 十分な病歴聴取や正確な身体診察ができない、得られた情報を批判的に考察することができない、臨床推論ができない、適切な治療計画が立てられない、コミュニュケーション能力が低いという「臨床能力が欠如した医師」がふえていることを、Fred医師は嘆いている。

「彼らは、あらゆる種類の検査や手技をオーダーすることを習うが、いつオーダーするべきか、結果をどう解釈すべきか知らない」「詳細な病歴や身体診察を省けば、患者と医師の絆は希薄になるのだ。」と、Fred医師は述べている。

 

日本の医療機関では、短時間にたくさんの患者を診なければならない。検査や薬を出さなければ利益が出ない。医療被曝によるがん発生のリスクがあるにもかかわらず、患者はCT検査を求める。救急室のナースからは、「先生、検査と治療の指示はまだですか?」と非難され、短時間にできるだけ多くの患者をさばく医師が評価される。

このような社会的プレッシャーの中、私たちはオスラーの目指したベッドサイドでの実践的な教育、問診と基本的診察を大切にした心温かい医療を目指さなければならない。そのトレーニングこそが、病気ではなく患者を治療することであり、医師の臨床能力をさらに向上させることができるのである。

 

薬や検査を希望する患者さんは多いですが、実は問診や身体診察がより重要なのです。そして、詳細な問診も身体診察も全く報酬がありません。経済的インセンティブのある医療行為は瞬く間に浸透しますが、一見インセンティブのない方法(湿潤療法、糖質制限、ビタミン療法など)はなかなか浸透しません。

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