糖質制限論争・・・夏井睦先生ブログより
「糖尿病になったら糖尿病専門医でなく,自分で糖質制限すればいい!!」
熱い論争!
「あの能登先生がまだこんなことを書いてます」というメール。
本日「日経メディカルメール」の見出しを見ていたら「炭水化物制限食の長期的な優位性はまだ不明」というサブタイトルが目に入りまして、能登 洋先生みたいなことを言う人がいるんだなあと思って見たらやっぱり能登 洋先生の記事でした。
あいも変わらず、糖質制限もカロリー制限も時間が経てば結果は同じとか、多くのダイエット食の継続は難しいとか主張されていますが、糖質制限を実践した人から見ればなんと内容のないことかと思うのではないでしょうか。
引用しているメタアナリシスで低炭水化物食で死亡率が上がるなんていうのをさらっと織り交ぜていますが、どんな論文かと思ったらご自身の、確か江部先生に論破された論文だったりします。
まあ言い出せばきりがないのですが、そもそも能登先生は何がしたいのでしょうか。
より患者のために有効な治療を見出すためにやっているのか、自分が属している世界の治療を進めるがためにほかの(有用そうな)治療にケチをつけているのか。
能登先生が臨床で患者を診ておられるのかどうかは知りませんが、患者を治すための治療ではなく、ガイドラインを守って治療して良くならなければ患者が悪いとでも言いそうなイメージがあります。
糖質制限実践者は医師であれ患者であれ、それが短期的にも長期的にも正しいであろうという感触を持っていると思います。
何せ結果が圧倒的ですから。
能登先生も質の低い低炭水化物食のデータを混ぜて批判するのではなく、ご自身でスーパー糖質制限とカロリー制限の比較データを取ってみればいいと思うんですけど。
(確かに糖質制限側の論文ももっと欲しいところではありますよね、江部先生がやっていただければ最高なんですが)。
「そもそも能登先生は何がしたいのでしょうか」についてですが,合理的に考えると意味不明の彼の言動は,[2:6:2]の[下位2割]だとすると単純明快です。つまり能登先生は[医者集団の下位2割],[内科医集団の下位2割],[糖尿病専門医集団の下位2割]であり,[下位2割]の思考パターンに従って考えて行動している,と考えるのです。
[2:6:2]の[下位2割]は「新しいものはまず拒絶/常識の否定に嫌悪」します。これは恐らく生来のもので,知識とか地位とか職業とは無関係。新しいもの,目新しいものに触れたら反射的に拒否しちゃいます。
つまり,無意識的に古き良き糖尿病治療を守ろうとし,糖質制限は「新しい治療法」だから無意識的に否定します。だから,いろいろ難癖をつけては糖質制限を否定しますが,その根拠が科学的か否かは問題ありません。新しいものを否定すること自体が目的であり善ですから。
環境に変化がなければ,このタイプは圧倒的に生存に有利です。得体の知れない食べ物に手を出して食中毒で死んだり,見知らぬ動物に近づいて噛まれたり,知らない土地に歩きだして底なし沼にはまったりする危険性がないからです。変化がなければ,365日,同じことを繰り返すのが最善解です(ちなみに,得体の知れない食べ物を真っ先に食べて食中毒で死ぬのは,江部先生や鳥谷部先生,そして私ですね)。
しかし,環境が変化し始める[下位2割]より[上位2割]の方が生存に有利になります。それまで目にしたことのない動物や植物が増え,それまで慣れ親しんだ動植物が減ってくるからです。江部先生や鳥谷部先生はこういう場合に出番がやって来ます。「江部先生が(論文作成を)やっていただければ最高なんですが」についてですが,次のように反論します。
- 江部先生に論文作成まで求めるのは酷。糖質制限をしている他の医者が書けばいい。
- そもそも,医学論文を書けば認められる,というのが時代遅れの発想。
まず一点目。江部先生は毎日ブログを更新し,一般向けの本を年に数冊発行し,日々の診療をし,その合間を縫って全国で講演しています。その上,論文も書けというのはあまりにも無理な要求です。私の元にも時々,「夏井が英語の論文を書かないから,湿潤治療はマイナーなのだ」というお叱りメールを寄越す医者がいますが,そんなに言うならお前が書け,ですね。英語の論文を書く能力のある医者が論文を書き,私や江部先生を共著者に据えれば問題解決です。私は英語論文を書く能力もないし,そもそも論文執筆に費やす時間もありません。
そして二点目。私は「日本糖尿病学会に糖質制限を認めさせる/ガイドラインに入れてもらう」ことを目的にすべきではないと考えます。糖尿病学会は最初から相手にせず,糖尿病学会に所属しない医師,素人全体に糖質制限を普及させてしまえば勝ちなんですよ。つまり,「糖尿病学会所属医師は従来型の糖尿病治療をしているが,糖尿病患者が受診しない」状況を作り出せばいいのです。「糖尿病になったら糖尿病専門医でなく,自分で糖質制限すればいい」が常識になれば,糖尿病学会がガイドラインを振りかざして騒ごうと,能登先生がトンチキな論文を書こうと,全然怖くありません。つまり,糖尿病専門医の病院は閑古鳥で,糖質制限を指導している外科クリニックは糖尿病患者で一杯,という状況を作り出せばいい。
その上で何をすべきかシミュレーションしてみます。相手にすべきは糖尿病専門医ではなく,糖尿病患者とその家族,未来の糖尿病患者です。すると,医学雑誌に論文を載せるとか,海外雑誌に英文論文を投稿するという選択肢はなく,「インターネットに常に新しい情報を流す」のがベストの戦略であることは明らかです。