透析患者のリン・カルシウム管理

ドクターサロン 2026年1月号より 常喜 信彦先生

Q 透析患者のリン・カルシウム・PTH管理について御教示ください。
①2012年のエビデンスでは長期の影響を受ける時間依存性モデルにおいて、低リン・低カルシウムは死亡リスクを増大させました。2024年の本邦のデータでは時間依存性モデルにおいて低リン・低カルシウムのリスクには否定的でした。
②現行の海外のガイドラインではPTH値は500-700pg/mlまで許容されてますが、日本のデータでは240以下であり、症例によってはより低値が望ましいとかんがえられています。
これらの違いについて御教示ください。

内外の治療指針の違いが興味深い。通常の腎不全では、高リン・低カルシウムとなる。
 

2012年は、おそらく透析専門医は、食事制限をしっかりかけながらリンの管理をする。それからリンの管理にはカルシウム製剤をどんどん使いながら管理をしていた。むしろカルシウムは結果的に高めに管理しながら食事制限をかけていた時代のデータになります。 予後のフォローアップは3年
一方、2024年のデータはその後のデータ解析で、まず9年間の予後を見ているということと、むしろたくさん食べて上昇したリンはカルシウム非含有のリン吸着剤を使用してカルシウムをあげないようにしながらリンの管理をするという、2つの時代の治療が大きく変わっているという点から得られた違いではないかと私は解釈しています。

つまり、リン吸着剤が一般的に使われるようになった、ということでしょうか。

・低リン血症の意味・・・食事量がとれていないことを示唆する。摂食状態、消耗状態のマーカー
・海外のガイドラインは、PTHが高くなることによっておこる骨の病態から目標値を設定している。
・日本・・・生命予後を検討して決めている。(PTH)

おっしゃるとおりです。やはりPTHが高いと血管の石灰化や左室肥大、心臓の筋肉の肥大がおこってくるといわれていますので、心血管イベントが多い。最近は感染症も多いといわれています。

高PTHは繊維製炎をひきおこす。低カルシウム状態。

モニターするべきは?
何よりもカルシウムとリンです。これを両方一緒に測り、カルシウムが低くなってきたらそれを補充する。あるいは、リンが高ければリンを吸着して下げる治療を考える。この2つを同時にするために、まずはカルシウムとリンをしっかりとモニターすることでよいと思います。
カルシウムが下がっても、リンが高くなっても、PTHはたかくなってきます。通常の考え方からすれば、2つをモニターしてそれぞれカルシウムとリンを正常化すれば、おのずとPTHは適正値になってくるはずで、どちらかというとモニターする頻度は、PTHは少なくていいと思います。
二次性副甲状腺機能亢進症ということなので、カルシウムに着目してカルシウムをきちんと正常化するということですんね。

ちなみに、カルシウムの値に異常がでてくる腎不全の程度ですが、例えばクレアチンeGFRで言いますと、どのあたりからが多いのでしょうか。
4期相当です。eGFR 30未満に相当します。ここから大きくカルシウム、リンのバランスは崩れてきますし、そのほかでは貧血も顕著にでてきます。腎臓内科専門医がいろいろと介入し始めるのは、やはり4期、5期になってくると思います。
クレアチニンでいうと、2.0を過ぎたあたりですか。
そうです。その辺りから少しアンテナを立てる必要があるかとおもいます。
カルシウムですが、治療介入が必要なレベルはどのあたりからでしょうか。
これはいっぱんの正常値の下限である8.5。アルブミンで補正していただいて8.5mg/㎗以下、ないしはそこに近づいてきたところでカルシウムの補充は必要かなと考えます。沈降炭酸カルシウムのような製剤などが使いやすいと思いますので、処方していただければと思います。・・・500㎎を毎食後

よく話題にはなりますが、カルシウムの過剰投与はあまりおこらないのでしょうか
腎不全の方によっては起こりにくいと考えていいと思います。逆に、例えば骨粗しょう症がある高齢の女性で、ビタミンD製剤を内服している。腸管からのカルシウム、リンの吸収がすごく促進されているところに、骨にいいと思ってカルシウム製剤を服用すると、これはダブルパンチですね。吸収も良くなり、カルシウムも腸管に多く到達します。
ただ、一方で我々が診ている、どちらかというとビタミンDも低くなってきている、腎機能の悪い方々ですと、むしろカルシウムは低くなってくる傾向にあります。

ビタミンD製剤はいかがでしょうか。
一般論からいうと、ビタミンD製剤でカルシウム吸収が良くなるので、その値は上がります。リンも少し上がってしまいます。ですので、カルシウムが低くてリンが高いときにビタミンD製剤を飲むと、カルシウムも上がるけれど、リンも上がってしまうので、最初にカルシウムを上げて、リンを下げておいて、次にビタミンD製剤を使うのが一般的な処方のパターンかと思います

最期に食事ですね。腎臓病の末期の方の食事にはいろいろな制限がついて大変ですが、カルシウムについてはいかがでしょうか。
もちろん、カルシウムを上げるための食事を促すことがありますが、カルシウムが入っている食べ物の中にリンも入っていたりします。我々としては、カルシウムも上げたいけれど、リンはあげたくないので薬に頼ります。食事面では、どちらかというとリンを上げないような食事を摂るように制限をかけたくなるというのが一般的です。
具体的にはどういった制限になるのでしょうか。
一般的には、タンパク質がたくさんはいっているようなもので、典型的な例としては乳製品ですね。牛乳、チーズ、ヨーグルトなどはカルシウムももちろん入っていますが、リンが上がりやすいです。

蛋白質を制限してしまうと、身体全体が弱ってしまいますね。