薬剤抵抗性側頭葉てんかんとの鑑別が困難であったインスリノーマの1例

日本内科学会会誌 2024年12月号より 高木 恵理ら 順天堂大学代謝内分泌内科

39歳女性。6年前医からの発作性の多彩な神経症状と脳波異常所見から側頭葉てんかんの診断で抗てんかん薬が多剤投薬されていたが、症状改善を認めなかった。意識障害で救急搬送された際に初めて低血糖を指摘され、内分泌学的精査の結果インスリノーマの確定に至った。低血糖による中枢神経症状はてんかん症状と類似し鑑別困難な場合もあるが、糖質摂取後の症状改善を確認することが簡便かつ有用な問診項目である。

・低血糖症には自律神経症状と中枢神経症状があり、低血糖発作を繰り返すことで自律神経症状が目立たず中枢神経症状が前景に現れる。

・低血糖症による中枢神経症状は側頭葉てんかんに類似し、脳波異常を伴うこともあるため、鑑別診断が困難となることがある。

・インスリノーマは低血糖症を起こす根治可能な内分泌疾患であり、側頭葉てんかんとの鑑別には「糖質摂取後に症状が改善するか」の問診が極めて重要である。

 

一口メモ 病歴から薬剤性低血糖症や胃切除後の低血糖、反応性低血糖は否定的であった。初診時空腹時内分泌基礎値では血糖値は正常範囲内であり、インスリンの過剰分泌をはじめ低血糖症をひきおこすインスリン拮抗ホルモンの低下も認めず。インスリン自己免疫症候群の可能性も否定的であった。しかしながら、病歴から繰り返す低血糖症である可能性は完全否定できず。入院化での絶食試験を追加することでインスリンの不適切な過剰分泌を伴う低血糖が再現された。

コメント:症例は冷あせや居眠り、手足が冷たくなる、などの症状があった。 他にもいろいろ精神症状が列記されている。「白米を食べると治る」この病歴が最重要だろう。

診断も結構大変。1-3人/年/100万人あたりとインスリノーマは珍しい。

とにかく、てんかんと低血糖は鑑別する必要があるとのこと。