PPIと腸管感染症

日本内科学会雑誌 2023年1月号より
下平 陽介先生(秋田大学内科)
飯島克則先生

以下引用
Clostridioides difficile(CD)感染症および他の腸管感染症

多くの報告がPPIの投与によりCD感染症発症や再燃のリスクとなることを指摘している。

実際にPPI投与によるCD感染症リスクを示した報告は数多くあり、2018年のメタアナリシスの報告では、PPI投与は成人、小児においてCD感染症の発症リスクとなることが結論づけられており、そのリスクは2.34倍と示された。胃内PHが上昇することによってCDの生存が高まり腸管へと到達すること、トキシンの発現が増加すること、好中球の機能低下を来すこと、またPPI投与によるdysbiosisはCDへの易感染状態であることが示唆されるなど複合的な要因によりCD感染症が増加する。

PPI投与による他の腸管感染症の発症リスクも検討されている。最近のメタアナリシスの報告によるとサルモネラ、カンピロバクターなどの腸管感染症がPPI投与によりそれぞれ2.75-8.54倍、3―8.64倍と増加することが示されている。