NHKスペシャル「食の起源 第一回 ご飯」について・・・反論
糖質制限批判の内容でしたので、検証してみました。 あさイチと同様に、Fung教授と慶応大学の伊藤先生がご出演でした。反対キャンペーンなのでしょうね。
①ラオス人は米を毎日1キログラム近く食べるが、肥満や成人病が少ない。腸内にプリボテラ菌が住んでいるのが良い。
ラオス人の平均寿命は66.68歳(2016年)。1980年は50歳を切っている。いわゆる発展途上国で生活様式が日本人と異なる。
日本人の平均寿命は83.98歳(2016年)。すばらしいプリボテラ菌を選ぶか、平均寿命66.68歳とエアコンがない、歩く生活を選ぶか?
あまりに粗雑な意見で、科学的でない。
②糖質が人類にとって、最も重要なエネルギー源である。
糖質を主食にしていたのは、江戸時代の日本人。この時代の平均寿命は30歳から40歳の間。
蛋白質と脂質の摂取量が増加し、平均寿命は倍以上となっている。
糖質が最も重要なエネルギー源とはいえない。
③脳の栄養は基本的にブドウ糖
「基本的に」の文言があるだけよいと思う。以前は「脳はブドウ糖しか使えない」と言っていた専門家がたくさんいた。
すでに、超極端な糖質制限「ケトン食」療法が、ミトコンドリア脳筋症、難治性小児てんかん、グルコーストランスポーター欠損症などに保険適応となっている。低糖質食(およびケトン体)には脳保護作用があるというのが新しい常識。先日の江部康二先生のブログにも、糖質制限によるアルツハイマー病改善例の報告があった。
④ホモ・エレクトスは糖質を摂るようになって脳が大きくなった。
火を使ってどんぐりや木の根を加熱して糖質を摂るようになったことが、脳の発達の理由としている。私は文化人類学について詳しくない。 数年前のNHKスペシャルでは、ホモ・エレクトスの脳が大きくなった理由は、「肉食」のためと言っていた。 今回の番組の学説は正反対である。出典を知りたいものである。
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ナビゲーターの高橋一生と共に、人類進化の壮大な物語を、最新科学で解き明かす「人類誕生」より、180万年前の人類「ホモ・エレクトス」の暮らしをリアルなCGで再現した映像を公開!「ホモ・エレクトス」は、狩りを行なっていた人類。体毛が薄く、長距離を走ることができたため、獲物が疲れるまで追いかけて仕留めていた。栄養豊富な肉を食ベるようになったことで脳が発達したと考えられている。
⑤ 糖質を減らすと、心臓病の死亡率が50%増加する。癌や脳梗塞も増える。動物性脂肪が増加するのがよくない。
根拠は下の論文。コホートと呼ばれる観察研究。信頼性は高くない。Q4低糖質グループは、男性、喫煙者、アルコール摂取量、糖尿病患者、低学歴者が多く、不利。比較群間の差が大きすぎる。Q4のグループの糖質摂取量は39%(糖質摂取量214g)なので、そもそも糖質制限でない。Q4のグループは飽和脂肪酸摂取量が低すぎて不利。(つまり、動物性脂肪の摂取が不足している。)(番組の論旨と不一致)
⑥最も死亡率が低い糖質量は50-55%のグループである。
昨年のハーバードのランセット論文。散々批判されている。普通の頭の人間がこの論文を読めば、おかしいことは直ぐにわかるでしょう。
⑦ごはんと砂糖は全く違う。血糖値の上昇スピードが全く違う。
ごはんも速やかに血糖値を上昇させる。50歩100歩。
⑧日本人はアミラーゼ遺伝子が多く、速やかにインスリンが分泌される。これが日本人の長寿の原因。
米ばかり食べていた江戸人の平均寿命は30-40歳。
⑨伝統食、「ごはんに対する愛を持つべき」
サイエンスと情緒をまぜこぜにしている。
⑩アミラーゼ遺伝子が少ないリーダー(城島さん)は、よくかんで唾液を出して食べるように。
よく噛んで食べるのは大切ですね。続けるのは困難ですが。