パントテン酸(ビタミンB5)の発見
月間保団連 2019年6月号より ビタミン発見物語 笠原 浩 より
1931年、コーネル大のリングローズらはニワトリの皮膚炎が酵母を与えると軽快することに気づいた。すでに皮膚炎に有効な栄養素として、ビタミンB2とナイアシン(ニコチン酸)が知られてはいたが、それら無効であった皮膚炎を治したというのである。
1933年、オレゴン州立大学の科学者ロジャー・ウイリアムスは、酵母やレバーなどに含まれている成長促進因子を発見し、パントテン酸(ギリシア語で「どこにでもある酸」の意味)と命名した。この物質がリングローズらの報告した栄養素であることは、1939年にカルフォルニア大のトーマス・J・ジュークスとロバート・R・ウーレイによって証明された。
そして1940年には、このビタミンの結晶化と構造決定がなされ、メルク社がその合成にも成功した。
パントテン酸はビタミンB群に属する水溶性ビタミンのひとつで、かつてはビタミンB5と呼ばれた。この物質は肝臓、酵母、胚芽などに含まれ、その欠乏症はラットで重篤な皮膚炎などを引き起こして死をもたらす。
多くの食品に含まれている上に腸内細菌による合成もあって、通常の食生活を営んでいる人は欠乏症になりがたいとされていたが、第2次世界大戦中の連合軍捕虜にみられた足指のしびれや痛みがパントテン酸の注射で治癒したとの報告がある。この物質は皮膚の栄養にも関係するとされ、現代でもニキビ治療薬や火傷・創傷乾癬に対する軟膏などに配合されている。
医師は便秘の解消を目的として、パントテン酸を使います。腸蠕動を亢進させる作用があり、マグネシウムと併用されることが多い。