食物アレルギーと消化器疾患
日本内科学会雑誌 2024年12月号より 穂刈 量太ら 防衛医科大学消化器内科
引用
①ピーナッツアレルギー
英国では新生児の入浴後に皮膚にオイルを塗る習慣があるが、ピーナッツオイルを含むスキンケア製品の使用者がピーナッツのFAの発症リスクとわかった。湿疹があるとさらにリスクが上昇した。以上から、「皮膚」が食物抗原の感作部位として機能することと、皮膚バリアが食物トレランスにおいて重要な役割を持つことを提唱する概念となり、Dual allergen exposure hypothsesとよぶ。②ラテックス・フルーツ症候群
ラテックス・フルーツ症候群はラテックスアレルギー患者が交差反応のある類似の抗原性を持つ野菜、果物を食べて起こすFAでラテックスアレルギーの患者30-50%に発症し、重篤な症状が誘発されるため、長期にわたって回避する必要がある。このラテックス抗原とバナナ、栗、アボカド等の果物に含まれるクラス1既知なーぜのN末端領域のヘベイン様ドメインとが類似しており、交差反応によりFAが惹起される。
③ 加水分解小麦含有石鹸アレルギー
加水分解小麦末を含有する石鹸(旧「茶のしずく」石鹸等)使用者に、小麦アレルギーを発症するもので、重篤な場合は食物依存性運動誘発アナフィラキシーを発症するものである(典型的な報告では、パンを食べ、直後は何ともないが、運動をしたところ10分後に全身の痒みが始まり、全身の発赤、膨疹、腹痛、血圧低下がおきた、など)。
④花粉・食物アレルギー症候群⑤セリアック病 IBSなどの機能性疾患と診断されている疾患にセリアック病が含まれていることが指摘されており、ガイドラインにも鑑別するべき疾患と明記されている。
セリアック病は消化器症状(下痢、体重減少、腹痛、食欲不振、腹部膨満)を主体とする。進行すると吸収不良を介して多様な非消化器症状(鉄欠乏性貧血、皮膚炎・慢性疲労、関節痛、精神症状、成長障害、骨症状など)を合併する。
典型的には小児(15歳)が発症のピークである。しかし無症状の患者や、栄養欠乏の兆候のみを呈する患者の方が多いことに注意が必要である。西欧では成人の鉄欠乏性貧血患者の10%にセリアック病が含まれ、97%が診断されないまま見逃されているとされる。⑥好酸球性消化器疾患
好酸球性食道炎・・・喘息やアトピー性疾患との合併率が高く、疫学的にはIgE依存性アレルギーに類似する側面を持つ。 原因食の同定は皮膚アレルギーテストや血中IgEが用いられるが正診率が高くない。およそ5割程度の奏効率とされる。頻繁に原因として特定される6つの食物(小麦、ミルク、大豆、ナッツ、卵、魚介類)を除去する方法(six food elimination diet)
は6割以上の奏効率が報告されている。小麦、ミルク、大豆、卵の4つの食物に絞ったfour food elimination dietもある。