糖質制限通信より

父上の診療のこと、謝りながら治療方針を変更されたこと、読んで感銘を受けました。

 

小室クリニック 小室富美子 先生 糖質制限通信2018年10月号より引用

私の糖質制限10年の歩み

私の父は糖尿病医であった。父の小さな医院には見晴らしの良い窓の大きな食事ルームがあり、管理栄養士が常時2名勤務。食事会、ビュッフェ形式の栄養指導、バイキングに弁当を持参し、栄養士が採点したりと、「食事が基本」という考えで一生懸命患者指導をしていた。大病院や遠方からの紹介患者さんで、外来も19床のベッドもいつもいっぱいであった。皆で食事の勉強をし、近くの1周3.2kmの湖へ運動に出かけていたが、それでも父の患者さんは少しずつ合併症を併発し、糖尿病は恐ろしい病気だと子供の頃から感じていた。

 

医師となった私が糖質制限に出会ったのは今から約10年前、ダイエット本を探しに行った書店での立ち読みであった。江部先生の本を見て、眼から鱗どころではなく、糖尿病医となってからの20年間、私のやってきたことはいったいなんだったんだろうかと困惑してしまった。中野サンプラザでの江部先生の勉強会に参加し、自分の知識不足を再認識して落ち込んだが、自分と家族の糖質制限をその日から開始した。今までの患者指導をどのように変えていったらよいのかと悩んだが、その前にこの食事が安全なのか、続けられるものなのかを体験してみようと思ったからだ。そして我が家からご飯が消えた。

 

中略

診療のほうでは、「カロリー」から「糖質」へと、今までと違う考え方をお話して、謝りながら食事を変えていただくようにお願いをしていった。肉や油は身体に悪いから食べないという方もいた。ご飯は身体に必要だという方もいた。しかし、管理栄養士の佐々木栄子先生のお力をいただき、美味しく楽しく糖質制限を実践するための試食会、勉強会、料理教室を行いながら、SMBG(血糖自己測定)をしながらカロリー制限から糖質制限への変換作業が続いていった。

 

中略

主人が担当する整形外科外来でも糖質制限を紹介し、多くの方の膝の痛みや骨粗鬆症の改善に役立っている。地区医師会の先生方もなんとなくご自身達が糖質に気を遣い、患者さんに低糖質を勧めてくださっている。以前は糖質制限に批判的であった近隣の大学病院や中核病院から糖質制限導入の依頼が来るようになった。すでにインスリンと多剤を併用していて、血糖コントロールはよいが体重が落ちないのでよろしく、というケースが多い。甚だ勘違いなのだが、これぞ幸いと少しずつ薬やインスリンをはずしながら、糖質制限へ引き込んでいる。翌日からできる方、3年たってやっときづく方、未だにふらふらしている方それぞれだが、選ぶのはご自身なのでお任せしている。

主治医はあなた自身です。」