2型糖尿病の血糖コントロールのために、6~12か月以内の短期間であれば炭水化物制限は有効である(推奨グレードB)
上記引用
炭水化物は糖質と食物繊維からなり、一般的に炭水化物制限における炭水化物は消化性炭水化物を指す。消化性炭水化物の最低許容量は130g/日とされているが、これは1日に脳が消費する糖質の量から推測されている。実際には糖新生やグリコーゲン分解により糖質がつくられ、また脳がエネルギー不足に陥るとケトン体が利用されるため、最低許容量は不明である。
日本人において低炭水化物食の効果を検討した研究は非常に少ない。日本人2型糖尿病を対象に、6か月130g/日の低炭水化物食の効果を観察した研究では、低炭水化物食群で体重、HbA1cの有意な低下を認めたが、同時に総エネルギー摂取量も減少していた。この研究において低炭水化物食群で低血糖が3例あったとしているが治療満足度に有意差はなかった。一方、同様にエネルギー摂取制限食群と低糖質食群(130g/日未満、最終的には127±71.9g/日)を設定し、6か月後に各パラメーターを比較した研究では、総エネルギー摂取量均しく減少し、体重の変化も両群で差異はなかったが、低炭水化物食群でHbA1cと中性脂肪の有意な改善を認め、有害事象はなかった。また、非アルコール性脂肪性肝疾患を伴う2型糖尿病を対象とした研究では、低炭水化物食群(70-130g未満)はエネルギー摂取制限群と比較して3か月後の内臓脂肪面積の有意な減少は認めたが、HbA1cや総エネルギー摂取量、QOLに有意差はなかった。
欧米を中心に2型糖尿病において炭水化物制限の効果を検討した系統的レビュー、メタ解析が多数あり、炭水化物制限群は対照群(通常食、高炭水化物食、低脂肪食など)と比較して6-12か月の短期間であればHbA1cは有意に改善hしたが、12-24か月以降は同等であった。また、50g/日以下・130g/日異常の炭水化物制限ではHbA1cの改善は認めなかったとの報告もあり、24か月でのHbA1は炭水化物制限群で有意に悪化したとの報告もある。HbA1cの改善は体重の変化と関連があると言う報告がある一方で、炭水化物制限の程度はHbA1cの改善の程度と比例するが、体重の変化とは相関しないとの報告もある。ケトジェニックダイエット食においても6-12か月以内の短期間であればHbA1c、体重減少に有意な効果を示したが、一部の研究において消化器症状を含む軽微な有害事象が有意に増加していた。
RCTでは、炭水化物制限群で対照群と比較してHbA1cが改善した報告があり、これらのRCTのうち一部の研究では対象群と比較して総エネルギー摂取量に差異はなかったとされている。一方でHbA1cは対照群と比較して有意な改善はなかったとの報告もあるが、糖尿病約の減量が達成できたとの報告もある。
1型糖尿病において炭水化物制限の効果を検討したRCTがある。75g/日の低炭水化物食を12週間実施し、総エネルギー摂取量に有意差はなかったが、ベースラインと比較してHbA1cおよび1日のインスリン必要量は低炭水化物食群でのみ有意に減少していた。また100g/日未満の炭水化物制限を12週間実施したRCTでは対照群と比較してHbA1cの差異はなかったが、インスリン必要量は有意に減少していた。これら2つの1型糖尿病におけるRCTは観察期間が短く、サンプルサイズが小さいため、今後されなる科学的根拠の集積が必要である。
これらのRCT、メタ解析を解釈するうえでの問題点は、対象とする研究によって、BMI、炭水化物摂取量(低炭水化物食の定義)、観察期間、他の栄養素、対照群、総エネルギー摂取量の相違があることである。糖尿病における炭水化物の至適摂取量は、身体活動量やインスリン作用の程度によって異なり、一意に目標量や制限の程度を設定することは困難である。合併症や薬物療法などの制約がなければ、柔軟な対応をしてもよい。しかし、総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限することによって体重やHbA1cの改善を図ることは、その効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保する科学的根拠が不足しており、現時点では勧められない。一方で日本人2型糖尿病において、約130g/日の炭水化物制限によって有害事象なく6か月後のHbA1cの改善を認めており、総エネルギー摂取量が適切であれば短期間の緩やかな炭水化物制限は2型糖尿病の血糖コントロールに有効な可能性がある。
解説は残念というか、製薬会社の雇われだから仕方ないのだろう。
12か月良いものが、その後良くないはずもない。
米国ガイドラインとの整合性はこの場合必要ないのだろうか。
江部先生からは20年遅れだが、ひとまず改善はされている。