コリン作動性クリーゼとは?・・・ウブレチドによる副交感神経症状

日本内科学会雑誌 2023年7月号より

91歳の女性。呼吸困難で発症し、高度徐脈を認めたため循環器科紹介となったが、喘息様頻呼吸、腹痛など多彩な臨床症状を呈し、入院後に意識障害、高度縮瞳を認め、ジスチグミン臭化物内服に伴うコリン作動性クリーゼが判明した。高齢者では排尿障害のためコリン作動薬を長期服用していることも多く、原因不明の呼吸困難やその他多彩な症状を認める場合は、常にコリン作動性クリーゼを念頭に置いておく必要がある。

 

この薬は具体的にはウブレチド。普段は使っていないが、時に他院から処方されているケースがあるので油断できない。
毎年約40名の報告があるという。実際はその10倍はあるだろう。
血清コリンエステラーゼの低下が手掛かりとなる

ウブレチドは可逆性のコリンエステラーゼ阻害薬・・・コリン作動薬

 

コリン作動性クリーゼに関しては、2010年3月製薬会社から注意勧告がなされ、用法用量の変更と70歳以上の高齢者に投与する場合は注意するように警告されたが、依然として毎年薬40例のコリン作動性クリーゼの報告を認める現状である。

アセチルコリン過剰による副交感神経症状として、ムスカリン受容体優位の下痢、悪心・嘔吐、腹痛、発汗、流延、縮瞳、徐脈、喀痰増加などに加え、ニコチン受容体優位の呼吸筋力ていか、振戦、繊維束攣縮など多彩な症状が出現し、さらに重症となると意識障害、痙攣、呼吸筋麻痺から心停止に至る場合もある。初発症状は下痢、嘔吐・悪心、腹痛などの消化器症状が最多で、ジスチグミン臭化物内服中の患者にこれらの症状が出たらまず疑うことが重要である。診断には、副交感神経刺激症状の把握とともに血清chE活性の測定が有用とされているが、血性chE値の低下の程度と臨床症状に明らかな相関はなく、疑った段階での補助診断として用いることが勧められている。