シーハン症候群

広島医学 2023年6月号より 引用

シーハン症候群は、多くの場合は分娩後の授乳の障害月経が再来しないなどの慢性の症状を認める。他にも易疲労感低血圧、貧血などの症状を呈して気づかれることが多いが、下垂体機能低下症の症状は下垂体の虚血・高速の程度によりさまざまで非特異的なことも多い。そのため産後早期に診断される症例は少なく、契機となる分娩後数年から30年程度経過して判明する症例が多い。

シーハン症候群に伴う低ナトリウム血症は副腎皮質機能低下に伴うものと考えられており、急性期での発症頻度は低く、慢性期で33-69%に認めるとされている。しかし、近年、分娩後1週間前後での早期診断例が複数報告されており、一因として出血性ショックや産科DICに対する治療が進み救命が可能になったことが考えられる。松岡らは、近年13年で報告された産褥早期に発症したシーハン症候群19例のうち、血性ナトリウム値に言及している全症例に低ナトリウム血症を認めており、分娩時大量出血後にはナトリウム値の確認を行うことがシーハン症候群を早期に診断する上で重要であるとしている。本症例のように急性副腎機能低下に至った場合には致死的な状態に至ることもあるため、副腎機能低下症の発症により早期に気づくための有用な指標として利用できる可能性がある。

・血液データ所見では、TSHは正常。LH, FSH, PRL, ADH, ACTH, コルチゾール、など軒並み低下している。

・私はキャリアーの中でこの病気を見つけたいと願っている。

 

ローレンスティアニー パール98 – 伊藤内科医院 (itonaika.in)

 

ローレンスティアニー パール98

早すぎる閉経を続発性無月経と診断する前に、困難な出産歴がなかったかを聴きなさい。患者に感謝される治療可能な汎下垂体機能低下症が診断かもしれない

 

引用
続発性無月経、および、筋力低下・易疲労・性的機能不全を含むほかの症状を有する女性において、汎下垂体機能低下症はよく見過ごされます。汎下垂体機能低下症の最も多い原因は、出産時の出血に関係し、結果的に下垂体出血、もしくは二次性の下垂体機能低下症を起こす低血圧です。下垂体、視床の腫瘍を含むほかの疾患も下垂体機能低下症の原因となります。しかし、脳の画像検査で異常が指摘できない場合は、以前の難産歴が医師に正しい診断の方向付けを示してくれる可能性があるのです。

Nature reviewsより

シーハン症候群の症状は、1種以上の下垂体ホルモンの減少または欠失に起因し、乳汁分泌低下や疲労などの非特異的症状から重篤な副腎不全まで多種多様である。血管系に関連するホルモン分泌細胞の位置と一致して、成長ホルモンとプロラクチンの分泌低下が最もよく見られ、卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンがこれに続く。下垂体の重度の壊死によっても、甲状腺刺激ホルモンと副腎皮質刺激ホルモンの分泌が低下する。