コロナワクチンと皮膚病
皮膚病診療 2023年1月号より引用
水疱性類天疱瘡について
COVID-19 mRNAワクチン接種後に水疱性類天疱瘡が発症する機序についていくつかの仮説が提示されている。ワクチン接種によって1型インターフェロンγが過剰に産生されることで自然免疫系および獲得免疫系の異常な活性化につながり、自己免疫疾患の発症に関わることが考えられている。また、ワクチン接種時の注射針によって基底膜が破壊され、BP180が免疫系に暴露されることで水疱性類天疱瘡が発症する可能性も示唆されている。
乾癬について
現時点でCOVID-19ワクチン接種により乾癬が再燃するメカニズムについては明らかにされていない。COVID-19ワクチン接種後に誘導される免疫反応は、液性免疫だけではなく細胞性免疫も誘導されることが知られている。また、Bergamaschiらはコミナティ接種によりIL-15, IFN-γ,TNF-aなどのサイトカインが上昇することを報告した。
IL-15は炎症性のサイトカインで炎症反応の初期に作用し、IFN-r, TNF-a,IL-17などのほかのサイトカインの産生を誘導する。Negnaらや自験例でも生物学的治療投薬下でCOVID-19ワクチンにより乾癬が再燃していることから、既存の生物学的製剤でターゲットにされていないIL-15などの免疫反応性サイトカインがCOVID-19ワクチンによって活性化され、表皮ケラチノサイトに作用して増殖や分化異常が惹起される可能性があり、今後の検討が必要である。
多型慢性痒疹について
病理組織像で好酸球浸潤が強くCD4陽性リンパ球が多いため、Th2型免疫の活性化に伴い生じた皮膚症状と考える。
SARS-CoV-2ワクチン接種後のGVHD再燃
自験例では、SARS-Co-2mRNAワクチンにより翻訳されたワクチン抗原蛋白がIL-6,TNF-a, IFN-rといったサイトカインの産生・放出を促し、これらのサイトカインによりドナー由来T細胞が活性化した結果、GVHDの再燃を生じたと考えた。