広島医学2021年10月号より ピロリ感染胃炎による思春期鉄欠乏性貧血の一例
三反田史恵(安佐市民病院小児科)ら
以下引用
軽度栄養失調に加え、ピロリ感染が鉄欠乏性貧血の一因となり、除菌後に貧血が著明に改善した症例を経験した。症例は14歳女児。入院3週間前より全身倦怠感、労作時の動悸などを自覚した。下腿浮腫、倦怠感増悪を主訴に紹介医を受診し、高度貧血を指摘され当科入院となった。軽症のやせがあり、血液検査では低アルブミン血症とヘモグロビン3.9gの鉄欠乏性貧血を認め、鉄補充療法を開始した。バランスのよい食事摂取で栄養状態が改善する一方、ヘモグロビン値の上昇が緩徐であったため基礎疾患の検索を行った。ピロリ感染性胃炎と診断し除菌療法を行った。その後、ヘモグロビン値は良好に改善し、鉄剤内服終了後も貧血の再燃は認めていない。ピロリ感染が証明された鉄欠乏性貧血では除菌により治癒が期待できる。
なぜピロリが鉄欠乏性貧血をおこすか、考察されている。
・胃粘膜萎縮により塩酸やアスコルビン酸の分泌低下のため鉄吸収が低下する。
一般に、ピロリ感染に伴う鉄欠乏性貧血は鉄剤不応性あるいは再発性であって、除菌により改善するらしい。
思春期の鉄欠乏の原因として、ピロリ感染は重要である。
コメント:ピロリ感染が鉄の吸収を阻害することがあるとすれば、フェリチンが上昇しにくい場合、ピロリ感染を調べる必要があるかもしれない。