汎動物学(ズービキティー) 過食と拒食
動物のことを学ぶと、”人間という動物”のことがよりよく理解できる。
2017年12月5日 過食と拒食
人間と動物の病気を一緒にみる・・・・医療を変える汎動物学(ズービキティ)の発想より
ところが、獣医学のデータを詳しく調べてみると、驚きの事実を発見する。ヒトの摂食障害と重なるような食行動がさまざまな種で見られるのだ。
動物は、むちゃ食い、隠れ食い、夜間の過食、大量の食べ物のためこみ行動をふつうに行っている。神経性無食症と神経性大食症が、ストレスのかかった状況下に置かれたいくつかの動物で本当にみられるのだ。そして、こうした障害の「心理状態」はヒトと動物で異なるが、神経性生物学的に見ればヒトも動物も似ている。
汎動物学の視点に立つと、私の患者だったアンバーのように、動物もときには食べるのが怖いことがあるのがわかった。アンバーがサンドイッチを怖がったのと同様に、野生動物も家畜もその多くにとって、実際、毎日食べるものが危険に感じられる場合があるのだ。
2017年12月6日 過食と拒食2
人間と動物の病気を一緒にみる・・・・医療を変える汎動物学(ズービキティ)の発想より
捕食の脅威はさまざまな動物の代謝速度を上げ、危険に即座に反応できるような準備態勢をとらせる。
体のエンジンをフル回転させれば、血中や筋肉中でのエネルギー代謝が高まる。
ところが、エンジンの全開状態を維持したければ、すばやく燃焼するエネルギー源が必要になる。
単糖類などの炭水化物はそれにうってつけだ。
葉物に含まれる長鎖脂肪酸や、蛋白質の複合分子に比べると、それらの化学結合は簡単にばらばらになるため、腸内での分解プロセスが少なくてすむ。
体は即効性のあるエネルギー補給に糖質を利用するのだ。
摂食障害を研究する精神医学者は、過食症の患者は、たんぱく質や葉物を過度に消費することがほとんどないのに注目する。
バッタのように、彼らは食べまくる対象を・・・ときには強迫的な情熱で・・・砂糖など、単純糖質にしぼる
ストレスでどか食いする人で、あとから吐いたり下剤を使う代償行動をとらない場合は、こうした限られた物ばかりを食べるのはやめて、どんな食べ物でもひたすら食べるときがある。)
食べ物、物品、ペットの動物を強迫的に自分の手元に集める行為は、現在では、強迫性障害の1つとして考えられている。
強迫性障害は、不安を伴う摂食障害など、いくつかの精神疾患と関連がある。
臨床医は、神経性無食症の患者の大半が、強迫性障害や社会恐怖症などの不安障害に苦しむことも知っている。
2017年12月7日 過食と拒食
人間と動物の病気を一緒にみる・・・・医療を変える汎動物学(ズービキティ)の発想 より引用
皮肉な話だが、拒食症をわずらう動物というのは、考えたこともない、探してみようとも思わない場所のひとつにかくれているかもしれないのだ。
それは養豚場だ。
たくさんの社会的ストレスがかかると、 えさを食べるのは自分で制限する雌ブタがでてくる。たとえ、同じ群れの仲間がふつうに食べているときでもそうなる。
その雌ブタは体重が減り続け、とうとうがりがりになる。
それは、背骨がくっきりと浮き出た背中ですぐに特定できる。
・・・・ヒトもブタもそのまま食べずに餓死する場合がある。
・・・・・・この疾病にかかったブタは、普通なら食べるえさをほとんど食べない・・・・・代わりに大量のわらを食べるぶたもいる、と述べる。
それは、拒食症患者のあいだでよくある癖とも似ている。
患者は栄養豊富な食べ物を避けて、レタスやセロリなどおなかがいっぱいになるが、カロリー的にはよくないものばかりを食べるようになる。