生活習慣病に潜む「骨質劣化」に注意を 骨密度だけでない骨粗しょう症診療
メディカルトリビューン誌 2026年7月2日号より 井上大輔氏(帝京大学教授)
骨粗しょう症治療の指標として骨質を評価できないため、現時点では適切な薬剤を推奨するまでには至っていない。
とはいえ、ビスホストネート製剤などの骨吸収抑制薬は、骨質が劣化した患者の代謝回転の抑制によりより劣化した古い骨が滞留し、骨強度の改善を妨げる恐れがある。むしろ骨の再構築を促すテリパラチドなどの骨形成促進薬の方が適している可能性がある。同薬投与前後でtbsの推移をみると、顕著な改善が示される。一方、骨吸収抑制薬を投与した場合、骨密度の値は改善するもののTBSの改善は限定的との報告がある。したがって、骨密度と骨質に対する効果は薬剤の種類によって異なると言えるだろう。
海綿骨構造指標(TBS)は、二重エネルギーエックス線吸収(DXA)法による腰椎画像から骨微細構造を評価し、骨質を数値化する。
われわれは、骨質の劣化を促進するにトリガーについて研究しており、これまで加齢や生活習慣病に伴う酸化ストレス、終末透過産物(AGEs)の蓄積、および炎症が骨質の劣化に関与することを報告してきた。
骨質を規定する因子には三次元的な微細構造の他に、カルシウムやリンなどのミネラル含有量、ハイドロキシアパタイト結晶、コラーゲン成熟度(架橋構造)といった材質特性がある。現時点では骨質の測定法に課題はあるものの、骨質の劣化は骨密度低値のみでは説明できない重要な骨折リスクである。すなわち、骨密度の値がさほど低下していなくても骨折を来す病態こそが、骨質の劣化に他ならない。