可逆性脳血管攣縮症候群に後方可逆性脳症症候群を合併した産褥期女性の1例

広島医学会雑誌 2026年3月号より

可逆性脳血管攣縮性症候群(reversible cerebral vasoconstriciton syndrom: RCVS)は可逆的な脳血管の攣縮を特徴とする疾患で、突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)で発症する。8-38%の頻度で後方可逆性脳症症候群(posterior reversible encephalopathy syndrome:PRES)を合併するとされ、血管内皮細胞の障害や、それによる脳血流の自己調節能の破綻が原因として共通しているためと考えれている。産褥期はホルモンバランスや血圧の変動が大きく、これらの疾患の発症リスクが高まる時期である。RCVSとPRESはいずれも可逆性疾患であるが、早期の診断と治療が予後に影響する。特に産褥期はリスクが高く、神経症状出現時にはRCVSやPRESを念頭に置く必要がある。

RCVSの基本病態は、頭蓋内の交感神経活動や血管内皮細胞の機能異常などに起因する脳血管緊張の調節障害と推定されている。20-50歳までの比較的若い女性に多く発症し、誘因として、妊娠・産褥期、片頭痛の既往、高血圧、薬剤(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、トリプタン製剤、免疫抑制剤、化学療法薬)などが報告されているが、複数の誘因がある場合、TCVSをより誘発しやすいととされる。

産褥期はRCVSや片頭痛の好発期とされており、妊娠の終了に伴う女性ホルモン値の変動や、妊娠中に生じていた血流増加や末梢血管拡張などの生理的変化から急速に復帰することが誘因とされている。また、トリプタン製剤はセロトニン受容体に作用し血管を収縮させるため、RCVSの増悪因子となる。
RCVSに合併する頭蓋内病変は、くも膜下出血(30%)、脳出血(12-20%)、PRES(8-38%)、脳梗塞(12-20%)などが挙げられる。

PRESSは白質の血管性浮腫を本態とする疾患で、脳血流の自動調節能を超える血圧上昇によって過潅流が生じることで発症するとされているが、PRESを発症した患者の15-20%では血圧が正常もしくは低値であったと報告されており、高血圧のみでなく、血管内皮細胞の機能異常による血液脳関門の破綻も原因の一つと推定されている。