沖永良部島で作った漢詩
朝に恩遇を蒙り、夕に焚抗(ふんこう)せらる。人生の浮沈、晦明(かいめい)に似たり。
縦(たと)い光を回らさずとも、葵は日に向かう。若し開運無くとも、意は誠を推さん。
洛陽の知己、皆鬼と為る。南嶼(なんしょ)の俘囚、独り生を竊(ぬす)む。
生死何ぞ疑わん、天の附与なるを。願わくば、魂魄を留)めて皇城を護らん。
意訳(日本の偉人3 岡田幹彦より)
名君島津斉彬からは深い恩恵を受けたが、今は久光から島流しの憂き目にあっている。人生の幸運と不運はまるで月が満ちたり欠けたりする有様ににている。しかし日の光がめぐってこなくても葵の花は太陽に向かう。それゆえ私もまた不遇のまま世に出られなくても、まことの心を尽くして生き抜こう。京都や江戸で志を同じくした斉彬公はじめ橋本佐内、月照らはみなもうこの世にいない。南島に流された私一人が生をむさぼって生きている。しかし人間の生死は人知のはからいを超えたものであり、それは天の与えるものだ。だからたとえこの島を出られずここで朽ち果てようとも、私の魂は日本の国土に永遠にとどまり、都におわします天皇様をおまもりしよう。