重症熱性血小板減少症候群
日本医師会雑誌 2024年7月号より
日本では、2012年の秋に海外渡航歴のない50代の女性が発熱、全身倦怠感、消化器症状(下血を含む)を呈し、多臓器不全で死亡し、当該患者のの血液からSFTSVが分離された。日本で初めてSFTSと診断された患者であり、この事実により日本でもSFTSが流行していることが明らかになった。
最近、ネコや犬がSFTSVに感染してSFTS様症状を呈することが明らかにされ、かつそのSFTS様症状を呈した猫や犬にかまれたり、濃厚に接触したりしてSTFSVに感染する事例の報告が増加している。
患者報告数も増加傾向にあり、毎年100人前後の患者が確認されている。国立感染症研究所の発表によると、2022年7月31日までに763人の患者が報告され、そのうち92人が死亡している(致命率12%)。詳細な疫学調査によると、日本におけるSFTS患者の致命率は25%を超える。
臨床症状
SFTSでは発熱、全身倦怠感、下痢などの消化器症状が見られ、意識障害も半数以上で認められる。リンパ節腫脹もよく認められる症状である。歯肉出血、下血、皮下出血などの出血症状、意識障害(痙攣を含む)などの症状が認められる場合は予後不良である。意識障害は、SFTSVの脳神経組織での増殖による病態によるもの(いわゆる脳炎)ではなく、血球貪食症候群の病態に基づく症状と考えられる。