悪玉アミノ酸とは?

ドクターサロン 2024年6月号より

「葉酸とホモシステイン」 長井 美穂先生

以下部分引用

池脇 改めて歴史を振り返ってみますと、1969年に非常にまれな病気であるホモシステイン尿症という、ホモシステインを代謝する酵素欠損によって、ホモシステインの濃度が非常に上昇して起こるいろいろな神経障害+血栓症とアテローム硬化ということで、その当時、方もシステイン仮説というのもでたくらいですね。極端な例ですがいずれにしてもホモシステインは体にとってよくないという歴史はけっこうあるのですね。
長井 そうですね。
池脇 ホモシステインが上がりやすいのは葉酸不足が原因でもあるのでしょうが、どうしてホモシステインが上昇すると動脈硬化や最近ではアルツハイマーもいわれていますが、様々な悪い影響が起きるのか、その機序も含めておしえてください。
長井 高ホモシステイン血症、すなわちホモシステインが高くなると、血管障害が起こるのですが、その機序はまだ不明な点が多いながらも、有力な説としては、チオール基(SH基)をもつホモシステインが-S-S-結合をする過程で活性酸素種が発生して、酸化ストレスとして血管の内皮細胞を障害すると考えられています。さらには、ホモシステインによってコラーゲンの質が低下することで、血管が弾性を失ってしまい、血管の平滑筋細胞の分裂や増殖が促進されるほか、血液凝固に関係する因子に働きかけて、血栓形成をおこしやすい状態を惹起すると考えれています。

長井 JACCスタディという日本人の生活習慣に関する大規模コホート研究の一部で、約4万人を対象に調査した結果でも、高ホモシステイン血症が動脈硬化による脳卒中、それから心血管疾患による死亡リスクをそれぞれ4.4倍、3.4倍増加させたということで、リスクをかなり増加させることがいわれています。

長井 ホモシステインは主に腎臓で代謝され、排泄障害と合わせて、腎不全、特に透析患者さんなどは高くなるといわれています。そういったホモシステインの上昇に対して、いろいろ対策を立てなければいけない中で、やはり加齢やそれに伴う腎不全も高ホモシステインの原因の一つとなっていることは、確かであると思います。

長井 血中のホモシステインが高い群は低い群と比較して、認知症やアルツハイマー病のリスクが約2倍になるというデータも出ています。また持続的にホモシステインが上昇している状況自体がリスク因子となり、8年前に測定された血中のホモシステイン値が、その後の認知症およびアルツハイマー病の発症と相関しているというデータもあり、本当に深い菅家があることが現在わかってきています。