異種COVID-19mRNAワクチン接種後に増悪したバセドウ病の1例

広島医学会雑誌 2023年6月号より 和久 利彦先生

抄録

症例は薬物療法で長期安定していたバセドウ病の82歳。女性。ファイザー社ビンオンテック社COVID-19mRNAワクチンの3回の接取でもバセドウ病は問題なかったが、異種のモデルナ社COVID-19mRNAワクチン接種2日後よりバセドウ病が増悪し近医より当院へ紹介となった。血液検査で甲状腺ホルモンの上昇。抗TSH受容体抗体高値を認めた。異種ワクチン接種後17日目に38℃の発熱を認め当院検査でCOVID-19発症が確認された。バセドウ病のさらなる増悪が危惧されたが症状は微熱のみであり、異種ワクチン接種後34日目の血液検査では甲状腺ホルモンは改善していた。異種ワクチン接種はバセドウ病の増悪をもたらしたがCOVID-19へは入院・重症化予防効果があったと考えられた。早期の寛解を希望され、異種ワクチン接種後63日目、甲状腺全摘術を施行した。追加接種における異種ワクチン接種がバセドウ病を急激に増悪させる可能性があることを一般臨床医は銘記しておくべきである。

 

・COVID-19mRNAワクチン初回接種(1回目2回目接種)後にバセドウ病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎を発症した症例がまれながら報告されている。 バセドウ病に関しては、COVID-19mRNAワクチン接種後に新規発症例が34症例、寛解後再発や増悪例が12症例の報告が認められた。