腎性貧血の病態

広島市内科医会報90号より 田村 亮先生 正木 崇生先生

エリスロポエチン産生能低下以外に鉄利用率の低下も腎性貧血の主因となっている。CKD患者では、尿毒症に伴う酸化ストレスから慢性炎症の状態にあり、肝臓のヘプシジン産生が亢進されている。ヘプシジンは、腸管での鉄吸収を抑制するとともに、鉄排出体であるferroportin1を内包化し分解することで、ferroportin1の役割である細胞内の鉄を細胞外に出す機構を抑制することが知られている。つまりヘプシジンの上昇により、消化管からの鉄吸収が抑制され、ferroportin1の抑制に伴う鉄の利用障害が引き起こされる。

貧血に伴う酸素供給量の低下により虚血や酸化ストレスが惹起され、体液貯留や交感神経の活性化およびレニンーアンギオテンシン系の亢進が引き起こされ、心血管疾患やCKDの病態悪化につながる。

そのため、貧血を早期に適切に治療することが重要である。

コメント

①尿毒症の酸化ストレスにたいして、ビタミン療法は有効であろうか?

②酸化ストレスは、慢性炎症をきたし、いわゆる「炎症性貧血」「鉄の利用障害」の状態となる。すなわち、鉄を引き上げる、鉄を体に入れない、方向に動く

鉄欠乏はESAの効果を減弱させ、不必要なESAの増量を招く可能性があるため、腎性貧血患者において鉄欠乏を診断し、適切に鉄剤投与を行うことは重要である。鉄欠乏の定義および鉄剤投与の開始基準は各国のガイドラインで差異が認められるが、血清フェリチン値100以下またはTSAT20%以下という基準が現時点での保存期CKD患者の鉄欠乏の目安と考えられる。

コメント:フェリチン100以下が鉄欠乏、とは栄養療法関係以外ではあまり聞いたことがなかった。認識していない内科医が多いのではないか。

(海外では、ムズムズ脚の治療がフェリチン75以上目標だったと思う。)

HIF-PHD阻害薬はEPO以外にも血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を誘導するため、糖尿病性網膜症の増悪や悪性腫瘍の発症や進展を促進させる可能性が指摘されている。また、血管の石灰化やのう胞の増大、高カリウム血症および肝機能障害の危険性も指摘されており、画像検査による経過観察やカリウム濃度の測定、肝機能異常の有無などを定期的に評価することが推奨されている。

コメント:MRさんは、単純に「EPOの代わりになって、注射しなくていよい」、みたいに言っていた気がする。

少なくとものう胞腎にはESAの方がよいのでは。

 

ESAの副作用としては、高血圧の頻度が高い。貧血改善に伴う血液粘度の上昇や低酸素状態で弛緩していた末梢血管の収縮、エンドセリンなどの昇圧物質の関与が示唆されている。また、血栓塞栓症のリスクが増加する可能性や抗エリスロポエチン抗体誘導による赤芽球癆も挙げられる。また、腫瘍細胞表面に発現する受容体を介して腫瘍の発症・進展を促進するか懸念もあるため、担がん患者においては有効性と安全性を考慮して使用を検討するべきである。