維持透析中に亜鉛過剰に伴う銅欠乏による貧血を来した非代償性肝硬変の一例

広島医学会雑誌 2022年6月号より   初鹿 佳輝ら

88歳男性。 肝細胞癌治療中。糖尿病性腎症にて維持透析中。

低亜鉛血症もあり亜鉛製剤を開始した。2か月後亜鉛は過剰となっていたため亜鉛製剤を中止したが貧血が出現した。腎性貧血と考えエリスロポエチン製剤を投与したが改善しないため入院。正球性正色素性貧血であり原因精査を勧めたところ血清銅とセルロプラスミンが低下しており銅欠乏による貧血と診断した。栄養療法を開始したところ、銅とセルロプラスミン、ヘモグロビンは次第に改善し退院。1か月後には軽快した。非代償性肝硬変においては、肝性脳症の治療として亜鉛製剤を使用する機会が増えているが亜鉛過剰になれば銅欠乏による貧血が出現することもあり注意が必要と考えられた。(入院2年前から軽微な胃粘膜出血のため亜鉛含有胃粘膜保護剤を内服

 

汎血球減少を来した時点での血清銅7㎍/dl、 セルロプラスミン4mg/dl。エリスロポエチン製剤には反応せず。
本邦では銅製剤は認可されていないので、チョコレート、8枚、カシューナッツ15粒に加え、微量元素製剤の静脈注射をおこなった。治療を開始して4週間ではっきりと改善。
考察より
・原因としてはセリアック病、消化管バイパス術や小腸切除後など。
・慢性腎不全、透析患者では一般に種々の微量元素が欠乏している。銅は透析で除去されない。
・亜鉛が欠乏すると、皮膚炎、脱毛、口内炎、貧血、易感染性など
・亜鉛欠乏症は慢性肝炎や糖尿病、腎不全症例で合併し透析患者ではエリスロポエチン抵抗性貧血の原因となる。
・非代償性肝硬変においては亜鉛は肝性脳症の治療薬として認可され広く使用されている。
・銅欠乏により、脊髄障害による歩行障害や下肢腱反射の亢進、振動覚、位置覚の障害などの神経学的異常と血液学的異常がある。
・銅欠乏により、鉄の輸送障害がおきる。
・銅欠乏症の骨髄所見はMDSに類似する。
・血液では、血小板減少はまれ(5%)。汎血球減少となるのは10%のみ。いわゆるバイサイトペニアが多い。
・治療はココア飲料が使用されることが多い。

 

コメント:アイハーブのサプリを使えば楽そうだ。

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記事にはないが、2年前から使用していたのはポラプレジンクで、3か月前からがノベルジンだろう。3か月のノベルジンのみでは銅欠乏にはならないのではないか。

 

MSDマニュアルより

後天性銅欠乏症の治療は原因に対して行い,銅1.5~3mg/日(通常は硫酸銅として)を経口投与する。