ピリドキシン(ビタミンB6)について

ORTHOMOLECULAR MEDICINE FOR EVERYONEより

ビタミンB6は最重要なビタミンのひとつであるが、当然個々の状態により、最重要なサプリメントは違ってくる。この意味で、B6は学習障害と行動障害の子ども、統合失調症患者にもっとも必要とされるものである。体がトリプトファン(アミノ酸)からB3(ナイアシン)を合成するためには、十分なB6が必要である。B3の不足はペラグラ様の症状を引き起こす。これはB6でもB3によっても改善する。

B6を多く含む食品はひまわりの種、胚芽、ツナ、レバー、大豆であるが、多くの食品に含まれる。糖蜜にすら少しは含まれる。

B6は気分を改善し、心血管病のリスクを軽減し、そして、臨床的に手根幹症候群に有効であることが証明されている。ハーバードメディカルスクール病理学教授のDr.Kilmer S.McCULLYは、B6の不足は動脈硬化の病因のひとつであると述べている。これには、特にホモシステインレベルの上昇が関与している。B6を1日1000㎎まで増やすと、内因性のオキサレートの合成を減少させ、腎結石の形成を予防する。

「Infantile Autism(幼児期の自閉症」の著者であり、Institute for Children Behaviorの創設者であるBernald Rimland医師は、自閉症患者に対するB6療法の有効性を示し続けている。彼の初期からの継続した努力もあり、現在ではB6の有効性を示す12の二重盲検定が報告されている。

私(アンドリュー・ソウル)はすでに、統合失調症患者の尿にみられる”mauve factor(ふじ色の物質)”と呼ばれる物質について述べた。これは統合失調患者の大多数に存在するが、正常者にはあまり存在しない。この物質の存在する患者同士は、類似している。後に、この物質は化学的にクリプトピロールであると同定された。この物質は、動物に精神異常をおこさせる。

他の研究者らが、この物質の存在を確かめた。ふじ色物質は、脂質と蛋白質の酸化ストレスにより出現する。B6と亜鉛不足により、大量のクリプトピロールが体内で産生される。ピロール尿症と呼ばれる新しい症候群の患者は、尿中に過剰のクリプトピロールを認めることで診断され、より多くのB6を必要とする。B6、亜鉛、十分な抗酸化剤が有効である。多くの患者がしばしばこの治療に劇的に反応する。自閉症者の半数が改善する。

月経前緊張症や、つわり、そして子癇に、我々はB6と亜鉛のコンビネーションが有効であることを知っている。月経前緊張症は通常、3ヶ月以内に消失するか、耐えうる範囲に改善する。推奨量は1日1000㎎以下である。通常は250㎎以下であるが、500㎎を用いることもある。

B6の内服

B6は比較的無害である。深刻な毒性の報告もごく稀にではあるが存在する。どのような化学物質であれ、過剰であれば、他の化学反応を阻害したり、他の栄養素の不足を明らかにして、問題を起こしうる。通常使用量は1日1000㎎以下である。多くの場合は1日100㎎から500㎎の範囲で使用される。この量は、少数の過活動の子どもをより過活動にする。しかし、これはマグネシウムが不足している場合のみである。

B6を1日2000㎎-6000㎎摂取(標準的なアメリカの推奨量の1200倍から3600倍)すると副作用がおきうる。一過性の神経症状(ゆううつ、四肢のしびれやひりひり感)が時折報告されている。これらのケースは一般的でなく、また大概B6のみを大量に飲んだ場合であることを認識する必要がある。

米国のメディカルスクールの研究者らは、B6の大量内服により、7名が感覚神経障害を発症したと報告している。全員が回復し、脳に対する影響は認められなかった。3人が1日2000㎎、ほかは、3000㎎、4000㎎、5000㎎、そして6000㎎を内服していた。6人はB6しか内服せず、1人はマルチビタミンをとっていた。ラットと犬の実験では、体重1キログラムあたり200-1000㎎の服用で、歩行障害をおこした。これは60キログラムの人間に換算すると1日12000-60000㎎に相当する。我々はこの実験をB6(ピリドキシン)の安全性を示すものと考える。もしこの七名によりビタミンの知識があり、亜鉛とマグネシウムを併用していたなら、神経症状を起こさなかったであろう。ほかの研究者は、B3の不足がある場合のみ、高用量B6の副作用が出現することを示している。

1日1000㎎のB3(アメリカのRDAの500倍)では有害性の報告はほとんどない。Bコンプレックスと併用した場合は、実際に全く知られていない。避妊薬を飲んでいる女性は少なくとも1日50-100㎎のB6が必要である。経口避妊薬はB6、B1、B2、B3、B12、Cの不足を起こし、精神的な異常を引き起こす。