動脈硬化性疾患の予防を考える 小児への対応
ドクターサロン 2024年6月号より 土橋 一重先生
以下部分引用
土橋 コレステロールが高いのは、やはりFH(家族性高コレステロール血症)が一番代表的なもので、昨年小児FHの診療ガイドラインも改訂されました。詳しいところではそれを見ていただければと思うのですが、LDLコレステロール140以上で、特にFHの家族歴があれば、これはもう間違いなくFHとなります。もう一つは、LDLがすごく高い場合には、家族歴ははっきりしなくてもFHを積極的に疑っていきましょう、ということになっています。
大西 その目安はどれくらいですか。
土橋 だいたい180としているのですが、180以上あれば、先ほども言いましたように、家族歴がはっきりしなくても、FH疑いとしてフォローを奨めています。中にはすごく高い人がいて、250くらいありましたら、それはもうFHの診断でいいと思います。
大西 お子さんの場合、FHの治療は何歳ぐらいからと考えるのでしょうか?
土橋 一般的なFHなら、10歳以上でLDLコレステロールが180以上が持続する場合には、もちろん食事や生活習慣指導もするのですが、薬物療法をすることにしています。
大西 次に中性脂肪が高い場合の対応について教えていただけますか。
土橋 中性脂肪が非常に高くなるのは、リポタンパクリパーゼ(LPL)欠損症が有名で、それは小児でもあります。やはり膵炎を起こすので、少し問題になります。なかなか治療が難しいのですが、基本的には食事療法になります。
大西 その疾患は、どのようにしてみつけたらよいでしょうか。
土橋 検査しないとわからないところがあります。LPL欠損症の部分的なタイプでは食膳に測ってもあまり高くないことがあります。ただ、食後にすごく高くなり、1000近くになるタイプもあります。
大西 そんなにあがるのですね。
土橋 そういう人は、食後の採血も重要かと思います。
大西 膵炎はどれくらいを超えるとおこるのでしょうか。
土橋 やはり4桁になってくると、危険性が出てきます。
大西 膵炎まで起こるのはたいへんですね。
土橋 そうですね。
大西 続発性脂質異常症についてうかがいたいのですが、どういった疾患があるのでしょうか。
土橋 肥満に伴って脂質の異常がでてくる頻度が高いと思います。やはり中性脂肪が高くなったり、HDLが低くなったりして、LDLコレステロールも高くなりやすいです。ただ、肥満の子供が皆異常をおこすわけではないので、必ず原発性の脂質異常症も念頭に置く必要があると思います。
それからもう一つ重要なのは、やはり甲状腺です。橋本病などの甲状腺機能低下症で、本当にFHのようにLDLが高くなります。
大西 小さいお子さんでもそうなりますか。
土橋 はい。小学生くらいになると、ときどき見られます。
小児FHの診断基準より 一部引用
・本人にFHの病原性遺伝子変異がある場合はFHと診断する。親または同胞にFH病原体遺伝子変異が判明すればFHの家族歴に加える。
コメント:遺伝子検査をせずに、FHと診断されるケースが多いと思う。はっきりした家族歴があれば良いが、そうでない場合、LDLの数字だけで10歳の子供にスタチンを内服させるのはどうなのか。
LDLコレステロールは、本当にまずいLDLと、問題ないLDLがある。このことも考慮されていない。
そもそも、コレステロールは身体に不可欠なものである。
もっとしっかりした検査と治療方針(食事療法を含む)が必要だと思う。