治療効果はごくわずかで、日常生活では患者本人にも家族にも実感されない

アデュカヌマブ、アミロイドベータワクチンでは、アミロイドを減少できたが、認知機能を改善しなかった。

なぜ、レカネマブではアミロイドを減少でき、なおかつ認知機能を改善できるのだろうか?

以下引用

私の落胆に追い打ちをかけるように、最近になって二種類の画期的な新薬が発表された。抗アミロイドベータ抗体であるアデュカヌマブとレカネマブである。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、アルツハイマー病の初期段階に投与する薬としてこの両方を迅速承認した。おもな根拠としたのは、たったひとつのバイオマーカー、つまりアミロイドベータのプラーク(いわゆる老人斑)を変化させる能力をもつという点である。FDAはこのような裁定に踏み切ったものの、じつはそのバイオマーカーの妥当性には重大な疑義が突きつけられており、世界中の研究者から厳しい批判の声が上がっていた。アデュカヌマブの場合はほかならぬFDAの諮問委員会が、承認申請を却下すべしとほぼ満場一致で勧告したほどだ。

どちらの薬についても、批判の対象になったのは次の3つの懸念である。一つ目は、いずれを用いた場合にも治療効果はごくわずかで、日常生活では患者本人にも家族にも実感されない可能性が高いことである。レカネマブについては、この薬を服用したグループのほうがプラセボグループより症状の進行が27%抑制されたと、大げさな宣伝が大々的になされてきた。計算そのものは間違っていないにしても、これはデータを示す方法としては著しく誤解を招くやり方であり、科学よりマーケティングの色合いが濃い。治験ではレカネマブのグループもプラセボのグループも、認知症の重症度尺度で評価したときに悪化していた。

二つ目の懸念は、治療のリスクが適切に対処されていないこと。とりわけ問題なのが、治療を受けているヒトの3分の1近くに画像検査で脳の腫れや出血が見つかることである。三つ目は、治療のコストが高いために、医療制度に巨額の負担となってのしかかるおそれがあるのに加え、市民のあいだの医療格差がますます広がる事である。