糖原病Ⅲ型とケトン食
The Lipid 2022.4より 大変興味深いレポート。グリコーゲンの蓄積を防ぐために、糖質を制限する!。
糖原病Ⅲ型に対する継続可能な修正ケトン食
国立成育医療研究センター 飯島 弘之、 窪田 満
糖原病Ⅲ型はグリコーゲン脱分枝酵素の欠損により肝臓や骨格筋、心筋にグリコーゲン限界デキストリンが蓄積する遺伝性疾患である。グリコーゲンの分解が障害されるため、乳幼児期にケトン性低血糖や肝腫大、肝逸脱酵素上昇を呈することが多く、肥大型心筋症を発症して心不全や突然死に至る例も存在する。これまでは低血糖を予防するために高炭水化物の頻回食が推奨されていたが、本疾患における過剰の炭水化物摂取は肥満や糖尿病をおこすだけではなく、グリコーゲンの蓄積を促進し、心合併症の進行を増悪させることが明らかになってきた。近年有効性が報告されている高脂質低炭水化物食は、エネルギー源としてケトン体を利用することで、グリコーゲンの蓄積と心合併症の進行を抑えることができる。しかし、この食事療法は低血糖や消化管症状を起こしやすく、味や形態の問題から継続が困難であり、経管栄養を要することが少なくない。今回われわれは肥大型心筋症を発症した糖原病Ⅲ型の1歳女児に対して、MCTフォーミュラとMCTオイル、コーンスターチを利用した修正ケトン食事療法を導入した。患者は経管栄養を要さずとも食事療法の継続が可能で、肥大型心筋症は軽快し、肝逸脱酵素も改善傾向となった。現在4歳で心筋症の所見はなく、成長発達は良好である。乳幼児期は糖新生が未熟であること、コーンスターチの分解に必要なアミラーゼの分解に必要なアミラーゼの酵素活性が低いこと、成長に必要な栄養素と活動量が年齢により変化することが糖原病Ⅲ型に対する修正ケトン食療法を継続する上で検討事項となったため、その治療経過を報告する。