書評「糖尿病は砂糖で治す!」その2 ケトン体害悪説

著者は、はっきりとケトン体を悪いものと述べています。

①(あるいは長期的な糖質制限やケトン食)では、残り20%の糖を補給できないので、脳は次第に死滅し、機能を失ってしまいます。

②人間の胎児の主たるエネルギー源も糖(グルコース)と果糖(フルクトース)です。いずれも胎盤を容易に通過できます。

もし、母親にストレスがかかってリポシス(脂肪分解)が起こったり、ケトン食や糖質制限などの低炭水化物食をおこなったりすると、ケトン体が胎盤を通じて胎児へ移行してしまいます。これはこれから成長していく胎児にとっては強いストレスのシグナルとなります。

コメント:①について

私は10年ほど糖質制限を行っていますが、今のところは脳機能を失った感じはしていません。

私の観察研究では、糖質制限で集中力が上昇し、学業や仕事の業績がよくなるケースが多いです。また同様の報告を多く見聞きしています。(三島塾の三島先生も有名です。)

「糖尿病の解決」で著名なバーンスタイン医師は今年87歳で、なお精力的に働かれています。バーンスタイン先生は50年におよぶ糖質制限生活を継続されています。 糖質制限の第一人者、江部康二先生(72歳)も20年以上糖質制限をされていて、バリバリの現役です。

リチャード・バーンスタイン医師87歳、人材求む! | 伊藤内科医院 (itonaika.in)

 

コメント:②

産婦人科医 宗田哲男先生の世界初の研究報告では、臍帯血、新生児、生後1か月の赤ちゃんでは高ケトン血症になっていることが明らかになっています。

つまり、母親が糖質制限をしていなくても、子供はケトン体で育っているということになります。ケトン体は重要な栄養である、と考えるのが自然だと思います。

妊娠糖尿病妊婦に対する糖質制限食療法でも、多くの実績を報告されています。

近年の報告では、ケトン体有用説が強く、筆者の理論はかなり少数派と言えます。少数派だから間違い、ではありませんが。

一般に、ケトン体には”脳保護作用”があると考えられ、日本ではケトン食療法は保険適応になっています。(glut1欠損症、難治性てんかんなどに)

ケトン食療法は、難治性てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳腫瘍、精神疾患などにたいしても試されていて(一般的な治療法ではないが)、一定の評価をされています。