ステロイドパルス療法について

病院勤務時代(はるか昔になってしまいましたが)は、ARDSなどにステロイドパルス療法を行っていました。この治療により助かったケースがありました。

しかし、ステロイドパルス療法には”しっかりしたエビデンスがない”のです。

 

発症後2週間以内の症例に対して メチルプレドニゾロン1~2mg/kg/day の使用を提案する    弱い推奨        ARDS診療ガイドライン2016(日本)

 

 上記引用

ステロイドパルス療法に関するエビデンスは乏しいが経験的に使われている。

維持量の必要性は専門医の間でも定まっていない

コメント:使用量も投与期間もバラバラで頼りない。ARDSには3日間では短いという意見もある。

 

 

敗血症性ショック、急性呼吸窮迫症候群などの重症疾患では、視床下部ー下垂体ー副腎系の一連のストレス応答機構が十分機能せず、ステロイドホルモンの分泌不全を呈していると考えられるため、このような場合には内因性ステロイドでミネラルコルチコイド作用も有するコルチゾールを用いることが多い。

 

また、ステロイドは循環血液中において血中タンパクと結合しているが、特にコルチゾール、プレドニゾロンはコルチコステロイド結合グロブリンと特異的に強く結合している。これに対し、タンパク結合率の低いメチルプレドニゾロン、デキサメサゾン、ベタメタゾンは髄液への移行性に優れることが期待され、中枢神経系の疾患に選択される傾向がある。

 

一方、ループス腎炎や腎移植後の拒絶反応をはじめ、さまざまな難治性疾患に治療効果を発揮するステロイドパルス療法では、メチルプレドニゾロンがつかわれることが多い。メチルプレドニゾロンが選択されるのは、初めてパルス療法の有効性が報告されて以来の歴史的な経緯もあるが、ミネラルコルチコイド作用が少なく、大量の副腎皮質ホルモンを投与する治療法に適しているからともいえる。メチルプレドニゾロンのパルス療法は、1日1000㎎の点滴静注を3日間連続するのが標準的である。この量は理論上、生体内のグルココルチコイド受容体の99%以上を飽和できるとされているが、その薬効はグルココルチコイド受容体を介したものだけでは説明できず、ステロイド受容体を介さない細胞膜や核膜への直接作用が関与するものと推測されている。

 

コメント:あのすばやい効果は、遺伝子を介さない作用によるらしい。

崖っぷちにたたされた時に、”エビデンスがないから行わない”は残念だ。

治療法がしっかり確立してほしいと思う。