最後に発見されたビタミン・・・・1948年ビタミンB12

ビタミン発見物語 松本歯科大学名誉教授 笠原 浩 (月間保団連 2019年7月号)より

 ビタミンの歴史はまだわずか約100年だという。1948年のビタミンB12が最後で、その後も様々な物質がビタミンではないかと報告されたが、ビタミンの定義にあてはまらなかった。ルース・F・ハレルが初期の論文を発表したのが1940年代なので、ビタミン発見からあまり時間が経っていない。現在のようなサプリメントも利用できる状況ではなかった。この分野の進歩と理解は加速度的に進みつつあると思う。

以下引用

ビタミンB12

貧血の治療に鉄剤が有効なことは古くから知られていたが、それに反応しない致死的な貧血があり、悪性貧血と呼ばれていた。

ボストンの臨床医ウィリアム・P・マーフィーは、悪性貧血の患者に生の肝臓を食べさせて著しい効果を得たことから、ハーバード大学の病理学者ジョージ・R・マイノットとともに研究を進め、その結果を1927年に報告した。治療効果は明確に証明されたが、生レバーを大量に食べさせられた患者達は悲鳴をあげていたという。

ロチェスター大学の病理学者ジョージ・H・ホイップルも同時期にイヌの貧血に動物の内臓の摂取が有効なことを認めている。マーフィー、マイノット、ホイップルは肝臓抽出物中の抗悪性貧血因子の発見で、1934年にノーベル医学生理学賞を授与された。

当初は微量しか得られない(現在では微生物を利用し大量に生産できる)ことや有効性の判定に時間がかかるなどの問題から、研究は容易ではなかったが、1948年にメルク社のカール・ファルカースらが、この有効因子を肝臓から赤色結晶として単離し、ビタミンB12と命名した。

この物質は分子量約1500の複雑な非重合分子で、化学構造の決定も困難を極めた。オックスフォード大のドロシイ・M・C・ホジキンらがX線解析やコンピューターの力を借りてなんとか成功したのは1956年で、ポルフィリン環やコバルトを含むビタミンB12の科学名はシアノコバラミンと決定された。