糖尿病栄養指導のパラダイムシフト 全国保険医新聞より

2018年12月15日号より

 11月18日に愛媛協会の総会が行われ、北里研究病院の山田悟氏が「糖尿病栄養指導のパラダイムシフト」をテーマに記念講演した。要旨を紹介する。

「次回のガイドラインで大きく変わる」

11月5日に日本糖尿病学会主催の糖尿病食事療法に関するシンポジウムが行われ、山田悟氏もシンポジストとして参加した。日本糖尿病学会の門脇孝氏もシンポジストとして参加した。日本糖尿病学会の門脇孝氏は「次回のガイドラインでは食事療法を大きく変える」と発言されたとのことである。

 

 カロリー制限は栄養指導に有効か

軽労作の人の摂取カロリー=標準体重x25-30Kcalは、何の根拠もない。ガイドラインはなんらかの論文を参照しているわけでもない。
そもそもカロリー摂取の計算は不可能である。例えば牛肉でも100gあたりのカロリーは146Kcalから456Kcalである。食品表示法による許容範囲は-20%から+20%まで認めている。
白米だけ食べた人の血糖値の上昇が一番大きく、タンパク質や脂質、野菜などを一緒に摂取した方が、カロリー摂取は増えているのに血糖値が下がる。
タンパク質を食べると、GLP-1が分泌され、インスリンがさらに分泌され、血糖値が下がる。脂質を食べると、GIPが分泌され、血糖値が下がる。
カロリー制限をすると、骨が痩せ、筋肉が落ちる。飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に変えると、死亡者が増える。飽和脂肪酸摂取を減らすと、死亡者が増える。糖質を多くとるのと比べて、脂質や蛋白質を多く取ると、空腹感がおこりにくい。糖質制限(ロカボ食)すると、カロリー制限食に比べて、HbA1cが減少し、中性脂肪も減少し、体重も減った。
カロリー制限をすると、基礎代謝が減るが、糖質制限で脂質を沢山食べると基礎代謝が減らない。アスリートが低糖質食と高糖質食とを選択すると、低糖質の方が最大パワーが増える。

講演を聞いて、これまで私がしていた患者指導は何だったのか、愕然とした気持ちになった。
標準体重あたり25-30Kcalの指導をしながら、「ガイドラインを見ても根拠が書いてないのに」と思っていた。私の診療所でも本格的に糖質制限に取り組もうと決意した。