山中克郎先生書籍
上より引用
昔から内科の名医たちは、問診だけで80%の病気は診断が可能であるといっています。問診とは、患者さんの訴えに耳を傾け、医学的に必要な情報をとる行為です。
若手医師は経験がないために、的確な質問ができないことがあります。すると診断が絞り込めないため、血液検査や画像診断に頼ってしまいます。患者さんの中にもCTを撮ってほしいと頼む人もいます。しかしながら、CTは放射線被曝があるために、10年後20年後にがんを引き起こす可能性があるのです。適応には慎重でなければなりません。
私達が症状や診察から脳梗塞の可能性は低いと説明しても、「絶対に脳梗塞でないと断言できるのか」と言い寄る患者さんがいます。医学教育に大きな貢献をした米国人医師ウイリアム・オスラー(1849-1919)は「医学は不確実の科学であり、推測の芸術である」という言葉を残しています。医療に絶対ということはありません。しかし、症状や診療所見、検査結果を詳しく分析することにより、かなり正確な診断をすることができます。少ない確立の疾患まで疑い検査を重ねては、医療費の膨張を招くばかりか、患者さんにとってもメリットは少ないと思います。
自宅近くで信頼できる「かかりつけ医」を見つけ、病気の相談に乗ってもらうことが大切です。問診だけでは限界があり、実際の診療で初めて病気の手がかりがつくこともあります。