書評「The LOW-CARB FRAUD 低炭水化物ダイエットへの警鐘」

T.Colin Campbell, PhD./ Howard Jacobson PhD.著

2013年に書かれている。 最近では、真正面から糖質制限を批判している本は珍しい。非常に興味深い本でした。

 

要旨まとめ

①筆者らの推奨する食事は、低脂肪(10-12%)低タンパク、高糖質食である。

”極端な”低脂肪食ともいえる。食物由来の食事を重視。動物性食品を減らす。

 

②筆者らの食事法(PBWFあるいはオーニッシュ食)は、健康状態を改善させる。低糖質食ではそのような効果はない。 例:心臓病、糖尿病、一定の癌、黒色腫、自己免疫性疾患など。

(本文中に甲田療法の症例もある。)

 

③米国では、糖質制限が非常にブームである。低糖質推奨者の目的は、ビジネスである。

 

④低糖質食では副作用が多い。具体的には、便秘(68%)、頭痛(60%)、口臭(38%)、筋肉の痙攣(35%)、下痢(23%)、全身虚弱(25%)、発疹(13%)。

 

⑤人間は本来、「肉食動物ではない。」人間はチンパンジーに近い。文化人類学的にも植物食であると考えられる。

 

人間は、ビタミンCの合成能がない。哺乳類でビタミンCを摂取する必要があるのは、草食動物である。

人間だけが例外であるはずはない。

 

⑦マクガバン報告の肯定。

 

⑧動物性蛋白質は癌を引き起こす。 カゼイン、メチオニンなど。

 

⑨温熱療法は癌に有効である。

 

コメント

筆者らの栄養療法で、改善例があることは事実であろう。(小西伸也先生の著述からも)

低糖質の副作用も指摘の通りであろう。(マグネシウム欠乏と糖質依存からの離脱症状、低栄養状態が想定できる。)

文化人類学的見地からは、先日のNHKスペシャルをみれば、ホモ・エレクトスは、骨髄食をすることで、ニッチをみつけ、脳が発達したとの見解であった。すなわち、肉食を開始してから人類は飛躍的な進化を遂げた。

(時代が変われば、文化人類学はどんどん変わっていくのでしょうが。)

肉食が癌を引き起こすかどうかは、現時点では判断できない。今後の研究を待たなければならない。

日本人がほとんど肉食をしていなかった江戸時代の平均寿命は30-40歳である。寿命が延びれば、癌が増えるのは当然ともいえる。

簡単にいうと、筆者のすすめる食事は、早死が普通の江戸時代の食事に近いのではないか?

 

 

T.Colin Campbell, PhD

コーネル大学栄養生化学部名誉教授。50年以上栄養科学研究の第一戦で活躍し、「栄養学分野のアインシュタイン」と称される世界的権威。300以上の論文執筆を含め多くの調査研究の実績を残したが、なかでも疫学史上最大規模といわれる「チャイナスタディ」は「健康と栄養」に関する研究の最高峰とされ、同研究結果等をまとめたものが「The China Study」である。