亜鉛欠乏性貧血・・・女子長距離ランナーの報告
上記より
亜鉛欠乏が貧血に関与していることは、1961年、Prasadらにより報告された亜鉛欠乏症の第1例においてすでに指摘されている。このイランの風土病と考えられていた小人症における貧血の原因は、DNA合成低下に起因するヘモグロビンの産生障害ではないかと考えられた。
その後長い間、亜鉛と貧血の関係については省みられることがなかったが、1996年、西山らは、女子長距離ランナーの貧血が鉄剤の投与のみでは改善されず、亜鉛を同時に投与してはじめて改善されることを報告した。運動選手における貧血は世界的にみても大きな問題であり、早期に治療しないと選手生命を絶たれることになる。
ソマトメジンCや男性ホルモンなど亜鉛由来の造血ホルモンの低下により貧血が惹起され、重症例では男性ホルモンに依存する筋肉量が維持できないため、競技の継続が困難になる。運動量の多いスポーツ選手では、1日の亜鉛摂取量の5-10%が汗として失われるため亜鉛欠乏に陥る。
そのほか亜鉛欠乏が関与していると考えらているものに、妊産婦の貧血、重症心筋症障害者の貧血、未熟児の貧血などがある。いずれも鉄欠乏性貧血であるが、鉄剤の単独投与は無効である。無効であるにもかかわらず鉄剤を投与し続けて高フェリチン血症を呈した症例は、亜鉛欠乏性貧血と考えられる。
コメント:女性の鉄不足は亜鉛不足を伴うことが多いと考えられているので、鉄と亜鉛を両方内服してもらうことにしている。