すさまじいパワハラを受け続けた医師

大浦裕之先生 医療従事者のためのアンガーマネジメント入門より引用

「医療現場はウェルビーイングが損なわれやすい環境であるため、医療者が積極的に各個人のウェルビーイングを評価し、その改善に努めることが、個人ひいては組織のウェルビーイング向上につながると考えます。」とお伝えしました。しかし、当然ですが現実はそう単純ではありません。医療現場は怒りに起因したハラスメント(特にパワーハラスメント)が蔓延しやすい職場環境であり、そのうような状況下では、個人や組織のウェルビーイングを追求するのは非常に難しいからです。

 

私自身、過去数年間にわたり、すさまじいパワハラを受けていた時期がありました。その当時は、当然ながらウェルビーイングとは程遠い状況で、上層部に報告して何の対処もなく、自分自身でも状況を改善する手立てがないまま、ただいたずらに時間が過ぎていきました。唯一の救いは、メンタルを壊さずにすんだことでした。

 

このように、患者の命を守ることが最優先であるはずの医療現場で、個人の感情によるハラスメントが「懲戒もなく横行」している現状があります。今でも、ひどいパワハラ被害を継続的に受けている医療者が各医療機関に一定数いることでしょう。そして、「声をあげてもどうしようもない」という虚無感にとらわれ、日々重い気持ちで職場に向かっている方も少なくないと思います。これでは患者のウェルビーイングを支えることはできません。

このような状況が医療界でまかり通っている背景には、外部の人々には事情がわかりにくい「医療現場の閉鎖性」が影響していると考えられます。

 

ちなみに、筆者は過去にすさまじいパワハラを受けていた時期、当番ではない週末には登山に出掛け、山に逃げ込むような日々を過ごしていました。自然の中で過ごす時間や他の登山者との交流が、筆者にとって大きな支えになっていったと感じています。ハラスメントに悩んでいる方には、メンタルを守る手段として、またストレス解消法として登山に限らず自然と触れ合うことをお勧めします。自然がもたらすヒーリング効果は絶大で、自分の悩みが小さく感じられるようになります。

ハラスメントを受け続けると、「自分の身は自分で守る」という当たり前のことをわすれがちです。組織に訴え出ることも正当な手段ですが、それと同時に、自らの心身を防御する意識をもつことも大切です。

このような状況は全く珍しくない。