血液透析中の銅欠乏
銅欠乏症による種々の血球減少症を併発した透析患者5例を経験した.男女比は1:4,平均年齢は76歳,平均透
析歴は5.2年,原疾患は糖尿病2例,多発性囊胞腎1例,腎硬化症1例,不明1例,併存症は誤嚥性肺炎3例,脳
神経障害2例,アクセス感染2例,大腸癌術後の低栄養状態1例,化膿性脊椎炎1例であった.1例で経腸栄養,4
例で亜鉛製剤投与が行われていた.診断時の血中銅,セルロプラスミンの平均濃度は26.6μg/dL,12.6 mg/dLで,
汎血球減少症2例,貧血+血小板減少2例,貧血のみ1例であった.3例に硫酸銅,1例に純ココア,1例に銅サプ
リ投与を行い,全例,血球減少が改善した.透析患者ではリン制限に伴う銅摂取量減少,亜鉛補充による腸管での
銅吸収抑制から健常人より銅欠乏をきたしやすいと考えられる.ESA抵抗性の貧血や複数系統にわたる血球減少症
をみたときは,銅欠乏も念頭において診療を行う必要があると考えられた.
上記によると、
①通常の食事をしている透析患者は銅欠乏にはなりにくい
②透析後に血清亜鉛値は上昇する。
③透析中の約半数が血清亜鉛低値となり、亜鉛摂取を勧められる機会が増えている。
④亜鉛投与の継続により、血清銅値が低下する。