腸閉塞に対する治療

ドクターサロン 2024年10月号より引用

A 虫垂炎もしくは憩室炎などの炎症により、腸閉塞がおこります。
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A 腸閉塞、特に腸がねじれてしまう、いわゆる癒着性の腸閉塞に多いのですが、その中の一部が絞扼性、いわゆる複雑性の腸閉塞になります。絞扼、要は血流障害が起こってくるので、そのときには全身状態がわるくなります。外科的手術を緊急に行わないと命にかかわるので、それをどうやって見逃さないで診断するか、治療するか重要になると思います。

Q どういった症状があり、どういったことに気を付けたらよいでしょうか?

A 腹痛でいらっしゃることが多いと思いますが、いわゆる絞扼性でない腸閉塞の場合、腹痛はそれほど強くないと思います。おなかを触って少し張っているかどうかで診断します。あとはレントゲンと採血等で絞扼性でない腸閉塞は診断がつくことが多いでしょうか。

Q 腹部レントゲンを撮るときはどういった点に気を付ければよいでしょうか?

A 所見としては、小腸、大腸のガスがどの程度あるかです。正常では小腸ガスはそれほど多くありません。2-3cmぐらいまではいいですが、それ以上になると拡張です。大腸ガスはあっても、拡張がそれほどないのが一般的で、6cmを超えてしまうと拡張しているので、そうするとどこに原因があるのか、診ていただくことになります。

Q 循環障害などの場合、造影CTなども必要になるのでしょうか?

A 絞扼性の腸閉塞の場合、なんといっても腹痛がかなりあります。人間、虚血が一番痛いので、それが起こってくると強い腹痛があります。ですから、患者さんの顔色が一番重要かもしれません。顔色と腹痛の状況やレントゲンを見て、絞扼性の腸閉塞を疑ったら、できるだけ早く、できれば造影のCTを取っていただくのが一番いいと思います。

Q 緊急手術が必要なケースが一番大事かと思います。循環障害の場合は、緊急性が高いと考えてよいのでしょうか?

A 一番怖いのは絞扼性の腸閉塞を見逃すことです。それをいかに早く診断し、いかに早く治療するかが患者さんの予後にかかわってきます。それが大変重要だと思います。

Q 時間がたってしまうと、敗血症になったり、ショックになることもかんがえなければいけないのでしょうか?

A 絞扼性腸閉塞をほおってしまい、6-8時間たってしまうと、完全に壊死に陥ってしまい、敗血症、菌血症になり、全身状態が非常に悪くなるので、命にかかわることになります。

Q 軽鼻胃管やイレウス管の適用はどのように考えたらよいでしょうか。

A 最初に絞扼性の腸閉塞を除外していただくことです。絞扼性腸閉塞、特にCTで、最近ではクローズドループといいますが、腸管がつながり、同じ腸管の2か所で狭窄しているものを見たら、緊急手術の対象です。それがないことをキチンとみていただければ、あとは保存的に治療することになります。
保存的治療は、まず胃管が一番多いかもしれませんが、胃管は24時間または48時間をめどに、効くか効かないかをみていただき、その次、多くはイレウス管という長いチューブをいれていただくことが、次の選択肢になるかと思います。

Q 保存的にいけるか、手術が必要だという判断になる場合があると思います。どのように気を付けて保存的治療をしていけばよいでしょうか。

A まず、腸閉塞の治療は減圧と十分な補液です。脱水を補正していただき、絞扼でない場合は全身状態がかなり良くなり、患者さんも楽になるので、その場合は様子を見ると判断して良いと思います。
ただ、イレウス管で100%治るものではないので、だいたい1週間をめどに、治らなければ外科的手術を考慮しなければいけないと思います。

Q その場合、発熱が生じたり、いろいろな変化が出てくるのでしょうか。

A 発熱や腹痛が出てきた場合は絞扼に移行したと思われるので、その場合は緊急手術になります。厳重に1日何度も診ていただき、そうなっていないことを確認します。
そうでない場合で、どうしても癒着がひとくで解除できない場合は、1週間では治らないということを患者さんに説明していただき、待機的でよいので、手術を組んでいただくのがよいのではないかと思います。

Q イレウス管などを抜去するタイミングは、どのように判断したらよいでしょうか。

A 患者さんの自覚症状です。排ガスがあったり、おなかが楽になったかで判断します。CTを頻繁にとる必要はなく、単純レントゲンでいいので、よくなっていることが確認できたら、一般的にはまずクランプしていただく。そして飲水から少しづつ段階的にやっていくことが多いです。

A 毎日の排液量がだいたい500ml以上あった場合は、あとは患者さんの状態などを見つつ、1週間をめどにきちんと判断することが大切かと思います。

Q 手術後の癒着性の腸閉塞が多いとうかがいましたが、手術の術式や、どこの手術を行ったかにより、頻度や症状は多少違うのでしょうか?

A 基本的には大きな手術をするほど、侵襲が多きければ大きいほど、よく起こりますが、日本で最も多いのは虫垂炎の手術後です。もともと行われる手術数が多いからかと思います。私も詳しくは知りませんが、なぜが婦人科的な手術で腸閉塞になるのは少ないと言われています。

Q 虫垂炎の手術の後、20年、30年とか、時間がかなりたってからなることもあるのでしょうか。

A 癒着というものが完成するのは1週間ぐらいですが、それは永久にとれません。そのような癒着のバンドができると、いつ起こってもおかしくないので、前に手術した既往があれば、20年たっても、30年たっても、可能性はあると思っていただいていいかと思います。

Q 輸液管理がかなり大事かと思いますが、その辺りは具体的にどのようにされていますか。

A それも患者さんのラボデータをみていただき、あとは排尿です。循環血液量がきちんと確保されていることを確認いただければと思います。
昔は抗菌薬をよく使っていましたが、最近は炎症が強くなければ抗菌薬は使わない傾向になっていると思います。

Q ほかに何か腸の動きを良くするような薬を使うとか、そういうことはやられうのでしょうか。

A 一般的には、最初にガストログラフィンという造影剤を使い、腸閉塞の状態を確認するとともに、腸閉塞の状態を確認するとともに、腸管を動かすかなり強力な作用もあるので、腸閉塞の状態かどうかを確認していただきます。
最近は漢方薬の大建中湯を注入することもときどきおこなっています。これは直接作用があるので、比較的効くこともあります。