HbA1c低値例の心血管死予後予測に1,5-AGが有効

ニッケイメディカル2018年2月号より

この発表の意味するところは・・・・?

食後高血糖があると、たとえHbA1cが良くても、心臓血管死をおこしやすい

 

HbA1c7.0%以下の急性冠症候群(ACS)患者において、1,5-AGが心血管死亡の予後予測因子として有用であることがしめされた。順天堂大学循環器内科の大内翔平氏らが、1月13日ー14日に開催された日本成人病(生活習慣病)学会学術集会で発表した。

HbA1cは心血管疾患の発症リスクと関連することが知られているが、糖尿病の診断基準を満たさなくても耐糖能異常があれば動脈硬化は進展するため、HbA1cが低値であっても心血管疾患の発症リスクは高まっていると考えられる。

一方、血糖コントロールの指標のひとつである1,5-AGはHbA1cよりも短期間(数日間)の血糖変動を反映し、血中1,5-AGの低値は動脈硬化や心血管疾患の発症リスクの上昇と関連すると報告されている(Watanabe M, et al. Atherosclerosis.2011:216:477-83.)。今回大内氏らは、HbA1cが低値の集団で、1,5-AGが予後予測因子として有用かどうかを評価した。

対象は2011年1月ー2013年12月に順天堂大学付属順天堂医院に入院したACS患者連続388例。このうちHbA1c7.0%以上、腎機能障害、悪性腫瘍、胃切除、ステロイド内服患者を除外した198例で解析を行った。1,5-AGは緊急冠動脈造影検査時に測定。対象患者の1,5-AG平均値である18.5μg/dLを境として、18.5μg/dL超を1,5-AG高値群、18.5μg/dL以下を1,5-AG低値群とした。

1,5-AG高値群と低値群を2016年12月まで追跡し、心血管死亡をエンドポイントとするカプランマイヤー解析を行った結果、心血管死亡の発生は低値群で有意に高率だった(P=0.02)。また、総死亡をエンドポイントとしても低値群では有意に高率だった(p=0.03)。ハザード比(HR)は、単変量解析で0.88(95%信頼区間:0.79-0.97、P<0.01)、多変量解析で0.76(95%信頼区間:0.41-0.98、P=0.03)という結果だった。

これらの解析から大内氏は、「症例数が限られるためさらなる検討が必要であるもののHbA1c7.0%未満のACS患者において1,5-AGが低いとイベント発生率は高まり、独立した予後予測因子となることが示唆された」としている。