レカネマブ・・・浜六郎先生の見解
浜先生の書籍より引用
アミロイドベータを取り除くのはかえって危ない
レカネマブは、アミロイドベータに結合して神経や血管に蓄積したアミロイドベータを取り除きます。レカネマブがアミロイドベータに結合すると、それが異物と認識され、ミクログリア細胞など脳内の免疫機構によって排除されます。その過程で強い炎症をおこすとともに、血管壁に平滑筋と置き換わったアミロイドベータが取り除かれると、隙間から血液が染み出し、浮腫みや出血が生じます。MRIで検出された浮腫や出血は、アミロイドベータが取り除かれた結果、必然的に出てくるものです。
害はレカネマブ群に圧倒的に多い
レカネマブの効果や安全性を患者で調べる第三相試験ではプラセボと比べ、脳内のアミロイドベータ凝集体が減り、認知症の進行も穏やかだったとされています。原因でなく酸化ストレスで結果としてできた物質を減らして本当に効くのでしょうか?まず、害の発生率をみてみましょう。レカネマブ群で①急性の過敏反応が26%(偽薬群7%)、②脳の浮腫13%(同2%)、③脳の1cm未満の出血17%(同9%)と高く、1cm以上の大きな脳出血も5例(同1例)に生じています。
本来臨床試験では、レカネマブとプラセボのどちらを使用したのか医師や患者にわからないようにしなければいけません。ところが、レカネマブでは害反応が圧倒的に多いのでどちらを使ったかが速い段階でわかります。これでは適切な評価はとてもできません。
レカネマブ群に有利な評価になる
脳にアミロイドベータが多い人は症状も重く、レカネマブを積活と強い炎症反応で脳浮腫や出血が起こりやすく有害事象で試験を中断されやすいと考えれれます。実際、レカネマブ使用グループでは偽薬使用グループに比べ、有害事象で試験から脱落した人が2.5倍、症様の評価対象から外された人が1.8倍いました。試験中断者は、症状評価の対象から外されるか、中断前の比較的よい検査結果が採用されます。いずれにしてもレカネマブが実際よりもよく聞いたかのように有利に働きます。その結果、レカネマブの症状悪化防止効果が過大評価された可能性が濃厚です。
認知症の進行を遅らせることができたかどうかは、記憶や判断力など6項目の各項目を0-3点(高点数ほど重症)にランク分けして合計点数(最重度18点)で評価する「CDR・SB」という方法がもっとも重視されました。レカネマブ群がプラセボ群よりも進行を「27%遅らせた」と報道されているのは、この方法で評価した結果です。しかし、点数の増加分の差でしめしたものであり、たいへん誇張されています。実際はプラセボ群に比べて18点中、悪化が0.45点少なかっただけであり、点数で比べれば改善幅は10%程度にすぎません。試験から脱落した人も含めて評価して比較すれば、この10%の差はなくなる可能性が大きいと考えられます。後述するように、有酸素運動では、認知機能はむしろ改善しますので、それに比べると明らかに劣ります。
また、ドネペジルの臨床試験の場合もCDR-SBで評価されて半年後に0.85点の悪化がすくなかったのですが、長期試験の結果、認知症治療で最も重要な指標である「施設入所」の割合に差はなく、死亡や重篤な反応など不都合なことはドネペジル群に有意に多かったのです。レカネマブの試験では「施設入所」の割合はそもそも評価の対象になっていません。CDR-SBでの0.45点の差が本当であったとしても、介護を軽減し、「施設入所」を減らす効果は到底期待できません。
脳出血が多発
さらに問題は、レカネマブは血管の平滑筋と置き換わったアミロイドベータにも結合してこれを取り除くことです。炎症反応をおこすとともに、血管壁に隙間ができて血液成分が染み出して脳浮腫は出血を起こします。そして、出血した部位や炎症をおこした部位が修復されると正常組織がなくなるために脳が萎縮します。
1年半の臨床試験期間中と、延長期に、脳出血による死亡は全くなかったとメーカーは主張しています。しかし、延長期の集計終了時点を過ぎてからわずか半年余りで脳出血による死亡が続けて3例報告されました。通常脳出血は1か所ですが、レカネマブでは、無数と言える多発性の脳出血が起こりました。動脈の平滑筋がストレスによる興奮毒や酸素毒で壊されたためにアミロイドベータで補強していたのに、それが取り除かれた結果です。
窓ガラスが強風で壊れた後、代わりにビニールシートを張って雨風をしのいでいたのに壊れた原因がビニールシートとしんじてはがしてしまったらどうなりますか?雨風が家の中に直接入り込みます。前紀の脳出血死例についてメーカーは、もともと病気があったからで、レカネマブが原因ではないと言います。雨風が家の中に入り込むようになったのは、もともと家が古かったからで、ビニールシートをはがしたことが原因ではない、といっているようなものです。有酸素運動では、脳浮腫や脳出血はありません。
脳が萎縮する
また、レカネマブの臨床試験では、レカネマブの量を増やせば増やすほど、脳が萎縮していました。臨床容量のレカネマブ群で最も脳萎縮程度がひどく、試験前に比べた全脳容積は、プラセボ群よりも27%余計に小さくなっていました。脳脊髄液を溜めている脳室は試験前に比べて拡大の程度がプラゼボ群よりも43%大きくなっていました。
脳を萎縮させるような薬剤を長期に使用して、認知症が改善するはずがありません。アミロイドベータを減らす物質を使った臨床試験から脳萎縮の程度を集めて分析した総合解析の論文によると、脳の萎縮速度から推定して、認知症の前段階から本格的な認知症になるまでの期間が、レカネマブなどと類似の物質を使うと4か月から7か月早まる、と予測されています。有酸素運動では、海馬の容積が1年後に2%増えていましたから、たいへんな違いです。
コメント:大学教授や中核病院の先生方のこの薬剤についての説明を何回かお聞きした。
浜先生の見解とは全く違っていた。浜先生は、元の論文をしっかり読まれて考察され、立派である。
こういった議論が勉強会に必要だと思う。