発熱した高齢者に対する身体診察
上田 剛士先生の講演会でした。わかりやすく、ポイントをついたお話しで、感心しました。
①腹部診察をしないばかりに、不明熱として、いろんな病院での診察をうけても診断がつかなかったケース。腹腔内膿瘍。
②q-SOFA・・・血圧100以下、呼吸数22以上、意識障害。 2点以上で敗血症の疑い。CURB65は、q-SOFAに年齢(65歳以上)とBUN(脱水)を加えただけ。
③菌血症で注目するべき点⑴悪寒戦慄・・・これがあったらすぐに救急車を呼ぶ。⑵経口摂取・・・8割とれていたら、まず菌血症ではない。
④あるケース1・・・よく発熱がある高齢者。グループホームの介護者はよく見ていた。「なぜ救急車を呼んだのですか?」「フーフーいっている(呼吸数)」「目線が合わない(意識障害)」
⑤菌血症の31%は尿路感染。18%が胆道感染。
⑥尿の色が濃い場合・・・脱水か、あるいは感染
⑦腎盂腎炎と診断された患者の43%の診断は正しくなかったという報告がある。(ゴミ箱診断になりやすい)
⑧腎盂腎炎の場合、尿閉と腎炎の存在を見落とさないこと。自尿があるからといって、尿閉がない、とはいえない。
⑨導尿するなら、尿量の測定を。膀胱が伸び切って、2000-2500mlたまっている人がいる。
➉尿閉の検査として、聴性打診法の仕方。・・・自分で排尿前後で実験してみるとよい。
⑪腎盂腎炎を疑うとき、・・・CVA叩打痛を!!思ったより横の人、思ったより下の人がいる。振動が大切。
当日は検査所見がなく(意識障害なども影響して)、翌日になってわかることもある。
この所見が消失しない場合は、複雑性尿路感染なども考え、画像検査を追加する。
⑫胆道感染を疑い、肝叩打痛を調べる。 マーフィー徴候は49%で評価不能である。
⑬ショック(臓器障害)の評価方法 3つ ⑴意識 ⑵尿量 ⑶皮膚症状
⑶の皮膚症状について 心臓と同じ高さで行う。CRTの延長 膝では5秒以上。
斑状皮疹(Mottling)・・・これが下肢から上へ上がっていくと、まずい。 6時間後の死亡率が上昇。
⑭嚥下機能評価 ニアリー=で構音機能 反復嚥下テスト 30秒で3回以上が正常
⑮サイレントアスピレーション・・・誤嚥患者の55%が咳反射が消失している。 すなわち、むせていないのに、せきしていないのに、誤嚥している。症状のない誤嚥。 例:治療しても改善しない肺炎・・・絶食で改善
⑯ルート感染やデバイス感染・・・刺入部の観察
⑰薬剤熱の特徴・・・・比較的(元気、徐脈、CRP低い)
⑱下痢のないCD感染症(だからこの名前になった)。 発熱だけで、下痢がないことがある。いわゆる不明熱の状態となる。白血球は上昇している。
⑲深部静脈血栓症・・・両下肢の太さを、指をつかって測定する。案外見落としやすい。Praff徴候という検査方法もある。
表在静脈が浮いてきている。左右差を見る。挙上しても静脈の浮きがなくならなければ診断。
⑳体温調節障害・・・部屋が暑い
㉑褥瘡は触ること・・・皮下の膿瘍、感染の有無をチェック。
㉒偽痛風・・・環軸椎もある。関節を触る事。 繰り返し診察を。
㉓不明熱闘い方・・・病歴は細かく聞く。身体診察もこまかく行う。
㉔ADL低下を伴う6Dを考える。
㉕皮膚の所見はスマホで写真を撮ってもらう。・・・スティル病の診断ができたことがある。
㉖忘れがちな診察部位・・・眼、耳、鼻・・・ANCA関連血管炎で難聴になることがあるらしい。
㉗肝膿瘍は診断が難しい。 エコーを行う。
㉘「腹痛」が主訴の感染性心内膜炎は珍しくない。
㉙陰部・肛門の症状は、自己申告してくれないことがある。
㉚精巣痛は結節性多発動脈炎を疑う。
㉛最終的には組織検査が必要
㉜FDG-PETの使い道・・・大血管の血管炎、人工物の感染、悪性リンパ腫
㉝忘れがちな診察部位・・・歯(舌圧子で、ぱこーんと叩く)、動脈系、肛門、足(足はつま先の爪まで)
㉞末梢が温かい・・・カテコラミンで締める??心拍出を上昇させるためにドブタミン
㉟めまいにはほとんど画像検査をしない。脳出血より脳梗塞が多く、CTではわからない。MRIも最初期は脳梗塞が写らない。(後方循環系)
㊱丸太町病院のCT検査の頻度は普通の病院の2分の1か、あるいは3分の1